賃貸住宅のカビで高額請求!?原状回復ってなに?入居者負担を避けるための裏ワザ

【相談】
「引っ越しの最中、洗濯機を移動させると、壁紙にビッシリとカビが生えているのを発見しました。賃貸の場合は原状回復しないとクリーニング代が請求されると聞いたことがありますが、この場合どうすればよいのでしょうか?」

賃貸住宅でのカビの発生は、入居者にとって大きな問題の1つでしょう。

カビが原因で発生する高額な請求は、賃貸住宅において懸念される事態であり、原状回復という言葉がその中心にあります。
原状回復とは、入居者が退去する際に、物件を入居時の状態に戻すことを指しますが、この過程でカビの除去や修繕が必要となる場合、それに伴う費用の負担が問題となります。

多くの入居者が不安に感じるこの高額請求を避けるためには、カビの発生を最小限に抑え、発生してしまった場合には迅速に対処することが重要です。

この記事では、賃貸住宅におけるカビ対策の基本から、入居者が負担を避けるための裏ワザまでを紹介します。
カビによる損害を防ぎ、賢く快適に賃貸生活を送りましょう。

この記事でわかること
・賃貸住宅のカビで退去時に費用が発生する原因
・賃貸住宅のカビが大家さん負担になるケース
・退去時の思わぬ請求をされないためには
・自分の責任でカビが発生した場合の自己負担を避けるための方法

1.入居者の責任となるかどうかは契約内容によって変わる

賃貸契約を結ぶ際、通常は毎月の賃料のほか、敷金や礼金、保証金などの説明を受けることになります。

敷金と保証金は、退去時に部屋を元の状態に戻すための修繕費やハウスクリーニング費、滞納家賃の補填に使われることが多いです。
これらは契約時に借主が大家さんに支払う必要のある金銭であり、退去時に精算されるものです。

1-1.敷金・保証金なしの物件は注意?

最近は「敷金・保証金なし」という賃貸住宅もあります。
このような賃貸住宅は通常よりも初期費用が安いため、入居費用を抑えたい借主には魅力的に感じられるでしょう。

しかし、この種の物件では、故意や不注意による室内の損害が発生した場合、原状回復にかかる費用を退去時にすべて負担する必要が出てきます。
通常、敷金や保証金はこうした費用の一部をカバーするために設けられていますが、それらがない物件の場合、退去時の費用が高額になる恐れがあるのです。

将来的に発生する可能性のある追加費用について十分に検討し、自身の責任範囲と費用負担について理解しておくことが重要です。

1-2.契約書にハウスクリーニングに関しての特約がある場合

賃貸契約では、退去時の原状回復やハウスクリーニングに関する特約が設けられることがあります。
これらの特約は、契約の自由原則に基づき、大家さんが様々な条件を設定できるため、注意が必要です。

例えば、室内でカビが発生した場合にハウスクリーニングの費用を全額借主が負担するといった厳しい内容も、契約書に記載されていれば有効となります。
契約時にこれらの特約にサインすると、後からその内容を拒否することは法的に困難になることが多いのです。

1-3.不当に不利な特約なら一般原則が基本になる

先ほど特約がある場合は後で拒否することが難しいとお伝えしましたが、どんな契約・特約でも絶対に従わなければならない、というわけではありません。

契約や特約には、一般原則と比較して不当に不利な内容が含まれている場合、借主にはそれに異議を唱える権利があります。
賃貸契約における一般原則は主に2つあります。

①借主の通常の使用や、建物・設備等の経年劣化により生ずる損耗は、大家さんの負担
②借主の通常の使用により生じたとは言えない、借主に責任があると思われる損耗は、借主の負担

①は、借主の通常使用や建物・設備の自然な経年劣化によって生じた損耗は、原則として大家さんの負担となるというものです。
これは、日常生活における通常の使用範囲内であれば、その結果として発生する損耗や劣化を借主が負担する必要はないという考え方に基づいています。

②は、借主の通常の使用を超える行為により生じた損耗、つまり借主の故意や過失によって引き起こされたダメージは、借主が負担するべきというものです。
これには、適切な換気を行わないことによるカビの発生や、物理的な破損などが含まれます。

カビの発生原因がこれらのいずれに該当するかを正確に判断することは、後に生じるかもしれないトラブルや費用負担の責任所在を明確にする上で不可欠です。
もし特約がこれらの一般原則に明らかに反する内容を含む場合、借主はその特約の改善や除去を大家さんに対して交渉することができるのです。

1-4.特約が無効だと主張するには要件が必要

特約が無効であると主張するには、いくつかの具体的な要件が満たされている必要があります。
たとえ借主が退去時にハウスクリーニング費用を大家さんに支払うという特約に同意した場合でも、以下の条件が満たされていないと特約が認められないことがあります。

契約書に明記されていること
契約書にはハウスクリーニングに関する特約の内容と、それにかかる具体的な金額が記載されている必要があります。
この記載がなければ、特約の有効性は認められません。

費用が相当であること
ハウスクリーニング費用は、そのサービスに対して相当と認められる範囲内でなければなりません。
過度に高額な費用については、特約の有効性が問われる可能性があります。

不動産仲介会社からの説明があること
不動産仲介会社からこの特約が例外的なものであるという説明があり、借主がそれに基づいて合意していることが必要です。
この合意の証拠が存在することも重要です。

これらの要件が満たされていない場合、特約が無効であると主張することが可能です。
しかし、実際には、単に主張するだけでは解決に至らないことが多く、大家さんとの交渉や場合によっては裁判所の判断を仰ぐ必要が出てくるでしょう。

2.善管注意義務に違反すると修復費用を請求されることも

善管注意義務とは、賃貸住宅の借主が物件を常識的な注意を払って使用し、管理することを義務づけられている法的概念です。
この義務の下では、借主は物件を日々適切に維持し、問題が発生した際には速やかに対処することが求められます。

例えば、カビの問題は賃貸住宅において一般的なものであり、その発生を放置することは、善管注意義務違反と見なされます。
借主がカビの発生に気づきながらも放置して被害を拡大させた場合、大家さんは修復費用を借主に請求する権利を持ちます。

実際に雨漏りが発生したにも関わらず、それを報告せずに放置してカビが広がり、大家さんから修復費用を請求されたということもあります。

これらの問題に対しては、借主が適切な掃除やメンテナンスを行い、問題発生時には速やかに大家さんや管理会社に報告することが不可欠です。
善管注意義務を果たすことで、修復費用の請求を回避し、快適な居住環境を維持することが可能となります。

3.賃貸に長く住めば住むほど修復費用が高くなるわけではない

賃貸にお住まいの方がよく思いがちなのは、「長く住むほどに退去時の修復費用が高額になる」という誤解です。

実際には、賃貸住宅の原状回復責任は、借主の通常使用による自然な劣化や経年変化を除いて考えられます。
つまり、借主が適切な使用とメンテナンスを行っていれば、長期間居住したからといって必ずしも修復費用が増加するわけではありません。

3-1.参考にしてもらいたい経年劣化に対する考え方(クロスの例)

長期間居住していれば、部屋が汚れていくのは当然のことです。
そして、敷金の精算において耐用年数を考慮した上で物品の価値減少を計算に入れるのが一般的です。

たとえば、壁紙(クロス)の耐用年数を基にした計算では、一定期間経過後にはその価値が事実上ゼロと見なされる場合があります。

具体例として、クロスの耐用年数が6年と設定されている場合、6年経過後の残存価値はほぼゼロに等しいと計算されます。
6年を超えて住宅に居住している借主にとって、もしクロスにカビが生えていたとしても、その張り替え費用を借主が負担する必要がない、と解釈される根拠となります。
この考え方は、賃貸住宅における経年劣化の扱いにおいて重要な指標となり、借主と大家さんの間で公平な敷金精算を行うための基準を提供します。

ただし、これはクロスにだけ発生している場合なので、クロスの裏側にもカビが広がっている場合は更に費用が発生するため、借主の負担が免れないこともあります。
カビの状況によって変わるものなので、あくまで一例として考えてください。

3-2.国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を確認しよう

国土交通省は賃貸住宅における原状回復に関するトラブルを未然に防ぐため、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を提供しています。
このガイドラインでは、経過年数や借主の注意義務違反の程度に応じて、借主が負担すべき修復の義務について明確な指針を示しています。

例えば、ハウスクリーニング代やその他の修復費用の請求が不当であると感じた場合、このガイドラインを参照し、自身の状況がどのような条件に当てはまるのかを確認することが重要です。

国土交通省のガイドラインを基に大家さんとの交渉に臨むことが推奨されます。
これにより、借主と大家さんの間で合理的かつ公平な解決が図られることが期待されます。

不明な点や納得がいかない請求に直面した場合、まずは国土交通省の提供する情報を確認し、それを根拠に交渉を進めることが有効なアプローチとなります。
このプロセスを通じて、賃貸住宅に関するトラブルを適切に解決し、双方にとって納得のいく結果を得るための一歩となるでしょう。

4.退去時に思わぬ費用請求をされないためにすべきこととは?

退去時に予期せぬ費用請求が発生することは避けたいと誰もが思うことでしょう。
そのような事態を避けるためにも、以下のことを行うようにしてください。

  • 退去時の費用負担を理解してサインする
  • 入居時の状態を記録する
  • 定期的な清掃とメンテナンスをする
  • 気になったカビや湿気は早急に報告する
  • 退去時に清掃する
  • 退去時の状態確認する

4-1.退去時の費用負担を理解してサインする

退去時の費用負担についてのトラブルが一番多いため、それを避けるためにも契約書の内容をすべて理解した上でサインするようにしなければなりません。
自分にとって不利な特約であると感じたら、特約の変更を申し出たり、契約しないという決断をするべきでしょう。

4-2.入居時の状態を記録する

入居時には部屋の状態を詳細に記録しておくようにしましょう。
可能であれば、写真やビデオを撮影しておくと、退去時の状態と比較する際に有効です。

4-3.定期的な清掃とメンテナンスをする

賃貸住宅の清掃とメンテナンスを定期的に行うことで、大きな修復費用が発生するのを防ぐことができます。
特に、カビの発生や水漏れなど、小さな問題は早期に対処することが大切です。
小さなカビでも、見つけたらすぐに除去するようにしましょう。

4-4.気になったカビや湿気は早急に報告する

生活していく中で自分のせいではないカビや湿気を見つけたら、早急に大家さんや不動産管理会社に相談するようにしましょう。
その記録を残しておくことで、管理義務違反を理由とした費用請求を回避することができるかもしれません。

4-5.退去時に清掃する

退去する前に部屋をきれいにしておくことが望ましいです。
清掃をすることで、敷金の返還に影響することがあるため、入念に行いましょう。

4-6.退去時の状態確認する

大家さんや管理会社と一緒に部屋の状態を確認し、その場で退去時の状態を記録しておくことが重要です。
これにより、後から予期せぬ請求が来ることを防ぐことができます。

5.自力でカビ取りすることで退去時の費用を回避できることも

今回の記事を読んで「今回は自分のせいだから自己負担は回避できないかも…」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、まだ諦めないでください。

退去時までにカビを除去することで、自己負担を回避できる可能性があります。
水回りのカビであれば市販のカビ取り剤を使用することで、自力でカビを除去することが可能なケースが多いです。

ジョンソン カビキラー

出典:amazon

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木材や壁など市販のカビ取り剤が使用できない場所なら、カビ取り業者のハーツクリーンが開発したカビ取り剤をおススメします。

こちらは市販のカビ取り剤とは違い、危険な成分が含まれていないため、壁やクローゼットなど水で洗い流せない場所でも使用可能です。

多少の費用や手間は掛かってしまいますが、自力で除去できれば高額な請求を避けることができます。
自力で対処出来そうなら是非試してみてください。

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6.まとめ

今回は賃貸住宅でカビが発生した場合の、退去時の請求を避けるためのポイントについて解説しました。

賃貸住宅においてカビが発生することは決して珍しいことではありませんが、適切な対応をとることで、退去時に思わぬ修復費用の請求を避けることが可能です。

  • 退去時の費用負担を理解してサインする
  • 入居時の状態を記録する
  • 定期的な清掃とメンテナンスをする
  • 気になったカビや湿気は早急に報告する
  • 退去時に清掃する
  • 退去時の状態確認する

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をはじめ、適切な情報に基づいて行動することで、賃貸生活をより安心して楽しむことができます。

また、カビが発生した際は、修復費用を抑えるためにも自力で除去するという方法もあります。

カビが広範囲に渡っている場合は一度カビ取り業者に相談するのもおススメです。
ハーツクリーンでは無料のカウンセリングを行っております。
お気軽にお問い合わせください。

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この記事が、賃貸住宅でのカビ対策や退去時の費用トラブルを避けるための一助となれば幸いです。