パンに生えたカビは食べても大丈夫?!

買ってから数日、放置してしまったパン。まだ食べられるかな…と袋を開けてみたらやはりカビが生えていた!

「でも一部にしか生えていないし…どうにかして食べられるのでは?」こんな風にお考えではないでしょうか。

今回はそんな疑問を解決すべく、パンに生えたカビやパンの保存方法について”食品衛生責任者”の資格を持つ私がご紹介します。悩んでいるのであれば、まずは本記事を参考に正しい知識をつけ、適切な判断をしていきましょう。

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カビが生えてしまったパンは食べても平気?

カビに生えたカビを見つけても捨てるか悩んでいる人は、恐らく、以下のような疑問をもっているのではないでしょうか?
このような悩みを安易に自分勝手に解決してしまうと後に痛い目にあう場合もあります。
まずは、カビが生えてしまったパンを食べても大丈夫なのかどうかを一緒に判断していきましょう。

カビの部分を削ったら食べれる?

パンの一箇所だけにカビが生えている場合、その部分を切り落としてしまえば食べれるのでしょうか?

その答えは、『カビ部分を削っても、食べないほうが良い』です。

なぜなら、パンに付着しているのは目に見えるカビの胞子だけでなく、胞子になる前の目に見えない菌糸までも全体に広がっている可能性があるからです。そのため、削ってもカビを除去できているとは言い難いということを理解しておきましょう。

確かに、目に見えるカビの部分を削ってしまえば、ふつうに食べられるパンと同じように思ってしまいます。しかしながら、そもそも細菌は目に見えるものでは無いので、少しでも菌が付着している可能性があれば安易に口に運ぶことはやめてくださいね!

同じ袋に入っていた他のパンなら食べれる?

目に見えるカビの箇所を削っても危険だと解説しましたが、それでは、カビが生えているパンと一緒に入っていた他のパンなら食べても大丈夫なのでしょうか?

答えは、『一緒に包装されていたパンも食べるのは控える!』です。

さきほどお伝えした通り、一箇所にカビが生えていればパン全体にカビの菌糸や胞子が広がっている可能性があります。特に、カビの胞子はとっても軽く、空気中を簡単に浮遊することができることをご存知でしょうか?そのため、パンを保存していた袋のなか全体にカビが行き渡っている可能性が高いのです。また、カビが産出した有害な毒素も付着している場合があるので、パンひとつでもカビが生えていたら、一緒の袋に入っていたパンを食べようとすることも控えたほうがよさそうですね。

加熱殺菌できるならトーストすれば食べれる?

さて、カビのような菌を死滅させる際、「加熱殺菌」という方法があるのをご存知でしょうか?カビも生き物ですので加熱や熱湯には弱く、条件を満たせば死滅させることもできます。それならば、カビの生えてしまったパンをトースト(加熱)すれば、食べられるのでは…?

しかし、『カビの生えたパンを加熱しても食べてはいけません!』

これには、カビが産出する「カビ毒素」が関係しています。これは人体にとって有害な物質で、実は、熱に耐えられる性質をもっているのです。確かに、カビが生えていたパンをトーストすることで「カビ自体」を死滅させることは不可能ではないでしょう。しかしながら、カビがパンの上で産出した毒素は調理での加熱では死滅することができません。そのため、

加熱をしたからといって口にすることも、避けるべきだと言えます。

カビの生えたパンを食べてしまったら...

もし、カビが生えたパンをうっかり食べてしまったと気づいた場合、焦ってしまいますよね。でも、カビによる健康被害はすぐに発症するものではありません。そこまで焦らなくとも大丈夫そうです。

ただし、ここで心配なのは「カビが生えているところには他の細菌やウイルスも付着している可能性がある」

ということです。例えば、黄色ブドウ球菌やノロウイルスなどは食中毒の代表的な原因で、誰しも一度は聞いたこともあるのではないでしょうか?黄色ブドウ球菌の感染においては、食後30分〜数時間という短い期間で強烈な腹痛・嘔吐・発熱などの症状が現れます。食中毒にあたってしまうと、その症状には非常に苦しむことになるのでできれば避けたいところですよね。こういった理由があるため、カビの生えたパンを安易に口にすることは、いかなる場合でもやめたほうが身のためです。

(参照:厚生労働省「主な食中毒病原物質」

また、運良くカビだけが付着している場合でも、「大丈夫だろう」と継続的に食べてしまった場合は後に健康被害が出る可能性も。その為、カビの生えたパンは食べない方が無難です。

パンにカビが生える理由とは?

ここまでで、「カビの生えたパンは食べてはいけない」ということはわかりました。しかし、なぜパンにカビが生えてしまうのでしょうか?

カビは「真菌類」に属する生き物

まずはじめに、カビはれっきとした生き物であり、「真菌類」というカテゴリーに属しています。
この真菌類にはわたしたちの食生活にも密接な「キノコ」や「酵母」も含まれており、実はカビの兄弟のようなものなのです!パンによく生えるカビは主に「青カビ」と「黒カビ」ですが、そのなかには「マイコトキシン」という毒素を産出するカビも潜んでいます。

余談ですが、カビを気にすると同時に、同じ菌の仲間である「細菌」や、強い感染力をもつ「ウイルス」などにも注意が必要です。

パンの袋のなかはカビの巣になりやすい?

カビもわたしたちと同じように有機物を消化し、水分を要して生きています。意外にもパンの水分含有量は38%もあるので、カビは水分も十分に確保できてしまいます。さらに、カビは0~40℃の間で生きることができますが、最も活動が盛んになるのは25~28℃

つまり、一般的な家庭の室温であっても油断は大敵!これを踏まえると、常温保存してあるパンの袋のなかはちょうどいい温度環境で、空気の対流も少なく、水分とエサ(有機物)がそろっているのだから、当然、カビにとっては居心地のいい場所になってしまうわけです。

参考:ヤマザキHP(https://www.yamazakipan.co.jp/oshirase/index2.html

参考:Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%8C%E9%A1%9E

パンに生えたカビは「食べても大丈夫なカビ」ではない?

やっかいなカビに悩まされる一方で、カビを利用した食品があることもご存知なのではないでしょうか?
食品に活用できるのであればパンに生えたカビも食して問題ないのでは、と考える方もいらっしゃるかもしれません。確かに、チーズやお酒、納豆などの発酵食品はカビを利用した食品です。

しかしながら、そういった食品には人間にとって無害なカビを独自に培養したものを利用しており、製造工程でも安全な環境を保っているため、活用することができています。
そしてこの世にはカビが何万種類も存在し、食品に活用されるようなカビと同じように思えたとしても、実際に有害か無害かというのは見た目だけでは判断できません。
ご家庭ですぐに判断できることでもないため、カビの生えたパンはいかなる状況であっても食べないほうが身のためですよ。

ここで、農林水産省の「カビ毒に関する情報」を掲載したいと思います。このページでも

かびの中には、かび毒のような人の健康に悪影響を及ぼす物質を作るものや品質を悪くするものがあります。かび毒は熱に強いものが多く、ゆでる、焼くなどの通常の調理条件では分解しません。

農林水産省 「食品のカビ毒に関する情報」より

と記載されています。人体にとって安全なカビなのかキケンなカビなのか肉眼で判断することは難しいですし、また見えていない部分にもカビが生えている可能性がありますので、カビの生えたパンは食べない方が良いでしょう。

必見!パンの上手な保存方法

パンは傷むのが早い食品のひとつで、特に、枚数の多い食パンなどは数日で食べきれないこともありますよね。しかし、せっかく買ったのだから無駄にせず、できるならば長く持たせたいもの…。

そこで最後に、パンの上手な保存方法をご紹介します。カビを生やさないためにも保存方法は最も肝心なので、ぜひ今日からトライしてみてください!

3日以内に食べるなら常温保存がベスト!

スーパーなどで売っているパンには賞味期限(もしくは消費期限)が記載されていますが、チェックしてみると製造からおよそ3日程度に定められていることが多いです。パンを買ってきて、もしその期限内に食べきれる予定であれば、常温保存でOK。

むしろ、パンは品質を保つためにも常温保存が好ましく、その期限内に食べきることが理想です。そのため、パンを購入する際には「3日ほどで食べきれるかどうか」を考えてみましょう。

常温保存するときには、パンが乾燥しないように袋の口をしっかり閉じ、なるべく密閉状態を保ちましょう。ただし、パン屋さんで売っている焼きたてのパンや調理パンに関しては、購入の際に指示された保存方法、賞味期限を守っておいしくいただきましょう。

出典:Amazon

パンのおいしさを守る冷凍保存テク

買ってきたパンを3日ほどで食べきれない、または、溜め買いして長期保存をしたいと言った場合は、冷凍保存がおすすめです。

パンを冷凍保存する際は、まずラップかアルミホイルでパンを小分けに包み、それらをジッパー付きの袋にいれて密閉しておくことが大切です。
こうすることで、パンが空気に触れてしまうことを防ぎ、品質をうまく保つことができますよ!

ただし、あまり冷凍庫に入れっぱなしにしておくと冷凍焼けが起こり、風味や食感が劣ってしまいます。そのため、冷凍保存であっても3週間を目安に食べきるようにしましょう。

出典:Amazon

余談ですが、品質を保つ目的で冷蔵保存をしてしまうと、パンの水分が飛んでパサパサになってしまったり、タンパク質の劣化が進み、かえって品質が落ちてしまうことも…。
ただし、室温が上昇してしまう夏場や、生ものを使用した調理パンは冷蔵庫に入れたほうがいい場合もあります。また、水分を逃さずに冷蔵保存するためには、このようなアイテムも活用してみるといいですね!

キッチンまわりは常に清潔に!

パンを保管するキッチン回りは、湿気やカビにとっても栄養源も多いため、常に掃除・換気を行いカビや雑菌が繁殖しにくい環境づくりが大事です。使用後は水気をふき取り、こまめに換気をするなどしてカビの発生を防ぎましょう。 

■関連記事■カビ取りだけじゃない!重曹を使ったキッチンのお掃除術

まとめ

本記事ではパンのカビに関するあらゆる疑問にお答えし、カビを防ぐことにもつながるパンの保存方法までをご紹介しました。食べようと思っていたパンにカビが生えているのを見つけたら、がっかりしてしまいますよね。せっかくのおいしいパンを無駄にせずおいしくいただくためにも、これからはカビをはやさないよう心がけていきましょう!

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ライター:小泉きょん 東京で猫と暮らすWebライター本と映画をこよなく愛し、酒場に生きる。趣味はカフェ巡りと、京都ひとり旅。 食品衛生責任者の資格を持つ。 https://twitter.com/___kkk0518