クラリネットのカビ取り

クラリネットはグラナディラという重く硬い天然の木と精密な金属が使用されており、トーンホールを塞ぐタンポは天然のフェルトや皮で作られていることが多いです。

木管楽器は金管楽器に比べて繊細でホコリや湿気、温度の影響を受けやすいです。

手汗や管内に唾液などの水分が残ったままにすると、カビが発生したり、木が膨らみ、金属部分に緑青が発生することもあります。

カビや緑青が発生すると、音が出にくくなったり、ノイズの原因にもなるので注意が必要です。

水分や汚れはカビの原因となるため楽器の大敵です。

大切なクラリネットを良い状態で長く使うためにも取り扱いには十分注意しましょう。

今回はクラリネットにカビが発生した際の対処法やカビ予防方法等をご紹介していきます。

1、クラリネットのカビ取り方法

用意するもの

  • 消毒用エタノール
  • 清潔な布

出典:Amazon

①消毒用エタノールを布に含ませ、クラリネットを拭きます。

②直射日光を避け、風通しの良い場所でしっかりと乾燥させます。

※注意点※

消毒用エタノールはクラリネット本体の劣化や破損、塗装の剥げや変色のおそれがあることを了承の上、作業するようにしてください。

自力でのカビ取りが不安な方はクラリネットを購入した店舗やメーカー、または楽器修理店への相談をおすすめします。

2、クラリネットにカビが発生する原因とは?

カビが発生するには、温度20℃~30℃、湿度60%以上の環境でカビの栄養源となるホコリや皮脂、手汗などの汚れがあると大量発生します。

冬などはクラリネットに息を吹き込むことで管内に温度の変化で結露が発生しやすいです。

クラリネットの本体には手汗や管内には唾液による水分や汚れが付着します。

また手垢や皮脂、ゴミやホコリが付着するとカビの栄養分となってしまいます。

演奏後にクラリネットをそのままにしてしまうとカビが発生してしまいます。

吹奏楽の楽器にカビが発生すると、嫌な臭いがしたり演奏に支障をきたすだけでなく、カビを吸い込むことで健康被害も出てしまいます。

カビを吸い込むと、肺炎やアレルギー性の喘息など病気や体の不調を引き起こすので注意が必要です。

3、カビが発生したクラリネットを使い続けると…

カビの生えたクラリネットを使用し、使い続けたことによって健康被害が出たというケースもあります。

吹奏楽で使用される楽器にカビが発生すると、カビを吸い込むことになってしまい、肺炎や喘息発作の原因となることがあります。健康被害から守る為にも早急な対処が必要です。

4、クラリネット演奏前後のケア

クラリネットを演奏する前には手洗いをしてから清潔な状態で触れるようにしましょう。

クラリネットを吹いたあとは、必ず管内やジョイント部分の水分や汚れを除去し、しっかり乾燥させて清潔なガーゼで拭くようにしましょう。

以下はクラリネット演奏後のケアの具体的な手順となります。

①管内の水分を拭き取りましょう。

クラリネットの演奏後は必ずリードをマウスピースから外し、ガーゼなどで水分を拭き取ってからリードケースに保管しましょう。

次に付属のクリーニングスワブでマウスピースの内部、管体内部、吹込管内部も拭いて掃除しましょう。

クリーニングスワブは清潔に保ち、しっかりと乾燥させたものを使用してください。

マウスピースを掃除する際には、先端を傷つけないようにしましょう。

クラリネットの管体のジョイント部分は特に水分が溜まりやすく、カビが発生するだけでなく、ひび割れを起こすおそれがあります。

ガーゼや綿棒を使用して念入りに水分を拭き取って乾燥させてください。

演奏の合間にも管体内の水分はこまめに拭き取るようにすると良いでしょう。

②タンポの水分を取りましょう。

演奏後にタンポが湿っている場合には、クリーニングペーパーを使って水分を取り除きます。

よく濡れるタンポや演奏中に水漏れが起きたタンポは特に念入りに拭き取りましょう。

クリーニングペーパーを使用し、トーンホールとタンポの間に挟みます。

指でキィを数回動かして水分がペーパーにつかなくなってくるまで繰り返します。

③タンポのベタつきを取り除きましょう。

パウダーペーパーの粉がついていない面をトーンホールとタンポの間に挟み、ベタつきがなくなるまで②と同じように繰り返します。

タンポはデリケートなので傷付きやすいです。そのため、キィをおさえた状態で無理やりパウダーペーパーを引っ張らないようにしましょう。

パウダーペーパーを使用する際には必ず先にタンポの水分を取り除いてください。

水分を取り除かずにパウダーペーパーを使用すると、ベタつきがひどくなってしまうことがあります。

④表面の汚れや指紋を拭き取りましょう。

ポリシングクロスやウェットティッシュを使用し、クラリネット表面の汚れや指紋を拭き取ります。

表面の汚れや指紋を拭き取らずにいると、カビの原因となるだけでなく緑青が発生したり、銀が変色してしまうことがあります。

汚れを拭き取る際にはタンポの側面を強くこすらないように気を付けましょう。

参考:「クラリネットのお手入れ方法」ヤマハ

5、月1~2回の念入りなメンテナンス

クラリネット演奏前後のケアと併せて、月に1~2回は念入りなメンテナンスをすることでクラリネットをより長持ちさせることができます。

①変色や汚れの掃除

クラリネットのキイが変色してしまった場合にはシルバーポリッシュを布などに少量つけ、磨くときれいになります。

シルバーポリッシュには研磨剤が含まれているため、頻繁に磨くとキイを傷める原因となってしまいます。

そのため、月に1~2回またはキイが変色してしまったときに磨くようにしましょう。

②キイオイルを注す。

オイルの注し方が適切でないと、クラリネットの不具合にもつながってしまいます。

キイからカチカチという音が聞こえるようになったらオイルが切れている可能性があります。

音が発生しているキィを確認し、キイとポストのすき間にオイルを1滴注します。

オイルを注したあとはキィを指で数回押してなじませます。

キイの表面に残った余分なオイルはそのままにせず、ティッシュなどでしっかり拭き取りましょう。

6、クラリネットの保管方法と場所に注意しましょう。

クラリネットを保管するときは、温度や湿度、衝撃から楽器を保護するためにも必ず楽器ケースを使用しましょう。

ケースの中には濡れたガーゼやクロスを入れるとカビが発生する原因になりますので入れないように注意しましょう。

長期間クラリネットを保管する場合には、しまったままにせず2~3か月に1度はケースから取り出し、カビが生えていないかを確認しましょう。

万が一カビが発生していたとしても早めに気付くことで対処することができます。

また、一度クラリネットを取り出しケースだけの状態にしてケースを日干しをするとカビ予防になります。

直射日光が当たると変色する原因となりますので、布をかけて干すか短時間だけ天日干しするようにしましょう。

ケースにカビが発生してしまった場合には買い替えることもおすすめします。

楽器ケースには丸洗いできるタイプのものもあります。

ケースを買い換える際には洗えるタイプのものにすると便利です。

7、楽器を購入したお店やメーカーに相談しましょう。

クラリネットのカビは購入した楽器店やメーカー、楽器修理業者等に相談するのが安心です。

それぞれ料金やクリーニングや修理の内容が異なりますので、事前に相談して確認し、見積もりを出してもらうのがおすすめです。

また、クリーニングや修理には日数がかかりますので、余裕をもって早めに相談してみましょう。

どうしてもクラリネットが必要だけれど、クリーニングや修理が間に合いそうにない!というときには、楽器のレンタルを利用することもおすすめです。

楽器のレンタルはクリーニングや修理期間の代替としての利用や楽器を購入する前に実際に使って試してみたいという方にもおすすめです。

8、まとめ

・クラリネットのカビ取りは消毒用エタノールを使用。

・クラリネットのカビの原因は湿気と汚れ!

・演奏前後のケアと月に1~2回は念入りなメンテナンスをしましょう。

・クラリネットの保管場所の環境にも注意しましょう。

・購入したお店やメーカーに相談をしましょう。

<参考文献>

・山領茂『はじめての管楽器メンテナンスブック[木管楽器編]』2011年、株式会社ヤマハミュージックメディア

・ヤマハアトリエ東京ほか『パワーアップ吹奏楽!楽器のメンテナンス』2019年、ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスミュージックメディア部

・松本忠男『カビ・ホコリ・菌を撃退!家の「正しい」掃除ワザ』2019年、宝島社

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