
久しぶりに着ようと思ってタンスの奥から着物を取り出したら、白い粉のようなものが付いていて驚いた経験がある方もいるでしょう。
もしそれが白カビだった場合は、他の着物に広がる前に早めに対応するのが重要です。
着物は絹や染めなど繊細な素材が多く、洋服と同じ感覚で水や洗剤を使ったり、強くこすったりすると、色落ちやシミ、変色、生地の傷みにつながるおそれがあります。
だからこそ、焦って落とそうとする前に、正しい対処を知っておきましょう。
この記事では、白カビが疑われるときの応急処置とNG行動、自力では難しい場合の対処を紹介します。
あわせて他の着物や衣類にうつさないための保管の基本と、再発させない収納のポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
| この記事でわかること |
| ・白い粉が白カビかどうかの見分け方 ・白カビを広げない初動対応 ・自分でできる応急処置とNG行動 ・素材別に注意すべき対処 ・うつさない保管と再発防止の収納ポイント |
目次
1. 白い粉を見つけたら最初に確認したいこと

久しぶりに着物を取り出した際、白い粉のような付着物に気づくことがあります。
これはカビなのか、それとも別の原因によるものなのか、見ただけでは判断がつかない場合も少なくないでしょう。
まずは白い粉の正体と、カビだった場合に注意すべきポイントを整理していきます。
1-1. 白い粉が付く原因はカビだけではない
着物に白い粉状のものが付いていると、「白カビかも」と驚く方も多いでしょう。
ただし、この白い粉状のものは必ずしもカビとは限りません。
防虫剤の成分が温度差で再結晶し、白い粉として付着することがあります。
また、帯や一部の素材では「粉吹き」と呼ばれる現象で、白い結晶状のものが現れる場合もあります。
このように原因は複数考えられるため、最初からカビと決めつけないことが大切です。
1-2. 見た目や臭いだけで判断するのは難しい
白カビは、薄くふわっと広がるように見えることが多く、臭いが手がかりになる場合もあります。
一方で、カビでも臭いが弱いことがあり、収納臭や防虫剤の臭いと区別しにくいケースも少なくありません。
そのため、見た目や臭いだけで確実に見極めるのは難しく、判断に迷うこともあります。
白以外の色が見える場合や、繊維の奥まで入り込んだ濃いシミがある場合は、早めに専門店へ相談しましょう。
1-3. 着物のカビは広がる可能性がある

着物にカビが出ると、同じ収納内で徐々に広がり、胞子が付着して他の着物や布製品に影響が及ぶことがあります。
カビは湿気のある環境で増えやすく、相対湿度を60%以下に保つことが抑制の目安とされています。
乾いて見えても、閉め切ったタンスや衣装箱の中は湿気がこもりやすいため注意が必要です。
1-4. 発見直後に行うべき基本対応
カビの疑いがある場合は、初期対応が大切です。
落とし方を考える前に、まずは「広げないための行動」を優先しましょう。
- カビが付いた着物を、他の衣類や着物から離して保管する
- 室内で作業する場合は換気を行い、可能であれば屋外で対応する
- 同じタンスや衣装箱に入っていた着物や帯も点検する
- タンス内にカビ臭さがある場合は収納場所側の対策も検討する
収納だけでなく自宅全体のカビリスクもチェック
収納内でカビが出る場合、着物だけでなく住まい全体の湿気環境が影響していることもあります。
ご自宅がどの程度カビが生えやすい状態か、カビリスク診断で目安を確認してみてください。
2. 白カビが疑われる場合の応急的な対処方法

カビの可能性があっても、すぐに専門店へ依頼できないケースも少なくありません。
そのような場合は、無理に完全除去を目指すのではなく、状態を悪化させない応急処置が重要です。
ここでは、自宅でできる範囲に限定した白カビの応急対応方法を解説します。
2-1. 準備するもの
応急処置する際は、以下のものを用意しましょう。
- 使い捨てマスク
- 使い捨て手袋(ゴム手袋、ビニール手袋など)
- 乾いた布または洋服ブラシ
- 着物用ハンガー
- 新聞紙またはビニールシート

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2-2. 応急処置で避けるべき行動
応急処置の段階で誤った対応をすると、カビを広げたり、着物を傷めたりするおそれがあります。
以下の行動は避けてください。
- 消臭スプレーを表地に吹きかける
- アイロンで熱を当てる
- 水で濡らす、洗濯する
- 直射日光に長時間当てる
水で濡らすと乾きにくく、乾燥が不十分だとカビが広がる原因になることがあります。
また、直射日光は色あせの原因になるため、干す場合は日陰で行いましょう。
着物によっては洗濯できるものもありますが、素材や洗濯表示が確認できない状態での自己判断は避けてください。
素材が不明な場合は無理に洗わず、3-1. 洗える着物と洗えない着物の判断基準を参考にしましょう。
2-3. 白カビの応急処置の手順
続いて、白カビの応急処置の基本手順です。
「落とす」よりも「増やさない・広げない・傷めない」を意識し、準備から後片付けまで含めて行いましょう。
防虫剤の再結晶の可能性がある場合は、応急処置をする前に日陰で陰干しし、様子を見てください。

① 事前準備を行う
マスクと手袋を着用し、床に新聞紙かビニールシートを敷きます。
② ブラシで払い落とす
着物をハンガーにかけて形を整え、ブラシか乾いた布でこすらず軽く払います。
③ 風通しの良い日陰に干す
日陰で数時間干し、湿気を飛ばします。
④ 後片付けをする
使い捨て用品は袋に入れて廃棄し、再利用する道具は除菌して十分に乾かしてから保管します。
この応急処置をしてもカビ臭さが残る、または白い粉が再び出る場合は、繊維の奥にカビが残っている可能性があります。
無理に続けず、プロへの依頼を検討しましょう。
■関連記事■七五三の着物にカビが!プロが教える正しい除去方法と失敗しない保管術
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3. 自分でできる?素材別の正しい対処とNG行動

着物は素材や加工によって、適切なお手入れ方法が大きく異なります。
誤った洗濯や洗剤の使用、強いこすり洗いは、色落ちやシミなどの原因になることがあります。
この章では、素材別に自分でできる対応と避けるべき行為を整理します。
3-1. 洗える着物と洗えない着物
着物は一見同じように見えても、素材によって扱い方が変わります。
まずは次を目安にしてください。
- ポリエステル:比較的扱いやすく、自宅で洗えるタイプもある(洗濯表示を必ず確認)
- 絹(正絹):繊細なため、自宅洗い不可のものが多い
- 素材不明:無理に自己対応すると傷めるおそれがあるため、自宅洗いは避ける
「自分で洗える」と決めつけず、洗濯表示や素材が確実に分かるかを基準にしましょう。
迷ったら着物対応のクリーニングに相談するのが安心です。
3-2. ベンジンはカビではなく油汚れ向け
「着物 カビ ベンジン」と検索される方もいますが、ベンジンは主に皮脂・ファンデーション・油はねなどの油性汚れに使われるものです。
カビを落とす目的で安易に使うと、輪ジミや色変化の原因になることもあります。
使用する場合は、必ず換気を行い、火気厳禁で、目立たない場所でテストしてから使用してください。
■関連記事■着物のカビはベンジンで落ちる?正しい使い方と注意点をプロが解説!

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出典:Amazon
3-3. 消臭・除菌スプレーは基本NG
市販の布用消臭・除菌スプレーは、和装品への使用を推奨していない製品もあります。
表地だけでなく裏地でもシミや変色のリスクがあるため、基本的に使用は避けましょう。
臭いが気になる場合は陰干しで対応するか、着物対応のクリーニングに相談するのがおすすめです。
どうしても使う場合は注意表示を確認し、目立たない場所で試したうえで自己責任で使用してください。
4. 自分で難しいときはプロへ相談!判断の目安と対処法

応急処置で見た目が改善しても、繊維の奥に菌や色素が残っている場合があります。
自己処理を続けるほど悪化することもあるため、迷ったら早めに相談しましょう。
ここでは、専門店に相談すべき目安と主な対処法を紹介します。
4-1. プロに相談すべき判断ポイント
次に当てはまる場合は、無理に自分で対処すると悪化して、かえって費用がかさむこともあります。
迷ったら早めにプロへ相談しましょう。
- カビの範囲が広い
- カビが点在していて、あちこちに出ている
- 白以外の色が見える、または変色がある
- 表地の柄の部分に出ている
- カビ臭さが強く残っている
- 払っても白い粉が戻る、短期間で再発する
4-2. 一般的なクリーニング店では難しいこと
一般的なクリーニング店は洋服向けの工程が中心のため、カビが生えた着物には対応が難しいことがあります。
特に正絹や染めのある着物は、処理によって色落ちや風合いの変化が起きやすく、受付を断られる場合もあります。
また、表面がきれいになっても、繊維の奥に残った菌や臭い、色素によるシミまで十分に処理できないことがあります。
カビの範囲が広い、表地の柄に出ている、臭いが強い場合は、着物専門の店に相談するのが安心です。
4-3. 着物専門店でできること

着物を扱える店や悉皆屋に相談すると、状態に合わせて丸洗い、シミ抜き、汗抜き、色補正、部分直しなどの提案を受けられます。
表地のカビは自己処理で脱色や変色につながることもあるため、不安があれば早めに相談しましょう。
ただし、素材の劣化や広範囲の変色、特殊な加工がある場合は費用がかさむこともあります。
まずは状態を見てもらい、見積もりを取って判断するのがおすすめです。
■関連記事■着物のカビ取り料金はいくら?プロの料金相場と業者選びのポイント
4-4. ガス滅菌という選択肢

カビの菌をできるだけ減らしたい場合は、ガス滅菌を検討するのも一つの方法です。
水を使わずに処理できるため、素材によっては負担を抑えられる場合があります。
中には、医療機器の滅菌にも用いられる方式として知られるエチレンオキサイドガスを扱う業者もあり、菌の処理を重視したいときの選択肢になります。
ただし、効果は方法や素材、カビの状態、業者によって差があります。
また、ガス滅菌は菌の処理が目的で、色素のシミを落とすには別の工程が必要です。
シミも落としたい場合は、ガス滅菌後に専門店でシミ抜きを検討しましょう。
5. 再発させないための保管とお手入れの基本
いくら着物のカビを除去しても、保管場所がカビの発生しやすい環境のままだと再発リスクは高くなります。
ここでは、着物のカビを再発させないための保管とお手入れのポイントを解説します。

5-1. 着用後はホコリを落として陰干しする

着物は着ているだけで湿気や汗を吸収します。
脱いだらすぐ畳まず、次の手順で手入れをしましょう。
- 汚れやシミがないか全体をチェックする
- 肩から裾に向かってブラシでホコリを払う
- 直射日光を避けて陰干しする
- 湿気が抜けてから畳んで収納する
このひと手間で、カビの原因になりやすい汚れや湿気を減らせます。
5-2. たとう紙は定期的に交換する
たとう紙は通気性を保ち、湿気を吸収する役割があります。
ただし、たとう紙だけで湿気対策が万全になるわけではありません。
長く使うほど吸湿性が落ち、かえって湿気をためやすくなることもあります。
交換の目安は1〜2年程度ですが、変色やシミ、においがある場合は早めに交換しましょう。
虫干しのタイミングで交換し、除湿剤も併用すると安心です。

着物用たとう紙
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5-3. 収納場所に合わせて湿気対策を変える

収納場所の素材によって湿気のこもりやすさが変わるため、それぞれに合わせた対策が必要です。
- 桐タンス:調湿性が期待しやすい
- 合板タンス:湿気がこもりやすいことがあるため、除湿剤をこまめに交換する
- プラスチック衣装ケース:湿気が逃げにくいため、除湿を強化し定期的に中を確認する
また、ウールやセーターなど虫が寄りやすい衣類と着物を一緒にしまわないようにしましょう。
5-4. 除湿剤と乾燥剤は置き方と交換を徹底する
除湿剤は置き方と交換のタイミングで効果が大きく変わります。
- 下に敷くタイプに加えて上にも置く(着物の間に挟めるタイプを併用するのも有効)
- 交換サインを見逃さない
- 梅雨から夏前は特に交換頻度を上げる
これだけでも湿気がたまりにくくなり、カビの再発リスクを大きく下げられます。

セイナン化成 きものの友
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5-5. 虫干しで定期的に風を通す
本格的に干せなくても、引き出しを開けて風を通すだけでも違いが出ます。
可能なら半年に1回程度を目安に虫干しを行いましょう。
梅雨明けや秋晴れ、冬の乾燥した日など、湿度が低い晴れの日を選び、直射日光を避けて日陰で干すのがポイントです。
忙しい方は、除湿機を使った室内干しでも効果が期待できます。
6. 着物だけで終わらせない!タンスや押入れの対策ポイント

着物にカビが発生した場合、原因が収納場所にあることも少なくありません。
着物だけを対処しても保管環境に問題が残っていれば再発につながるため、タンスや押入れのカビ対策も確認しましょう。
6-1. カビが出たら収納環境に原因がある可能性も
着物にカビが出た場合、タンスや押入れに湿気がこもっている可能性があります。
収納内は閉め切りになりやすく、壁際や底面に湿気が残ると、胞子が周囲に付着して増えやすくなります。
着物だけを対処しても収納側に湿気や臭いが残っていると再発につながるため、あわせて収納環境も点検しましょう。
6-2. タンス・押入れのカビ対策の基本

収納側の対策は、「湿気をためないこと」と「空気を動かすこと」が基本です。
まずは次の点を見直しましょう。
- 壁から少し離して置き、通気を確保する
- 定期的に扉や引き出しを開けて換気する
- 除湿剤を設置し、定期的に交換する
- カビ臭が強い場合は、収納内の清掃や追加対策も検討する
これらを習慣化するだけでも、湿気や臭いが残りにくくなり、再発予防につながります。

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6-3. 収納環境の見直しチェックリスト
収納側の対策ができているか、以下のチェックリストで確認しましょう。
- タンスや押入れの中を空にして、においと湿気の状態を確認した
- 収納は壁から少し離し、空気が通る配置にした
- 換気するタイミングを決めて、定期的に扉や引き出しを開けている
- 除湿剤を設置し、交換時期を管理している
- 収納内のホコリを取り、汚れがあれば拭き掃除している
- カビ臭が残る場合は、追加対策や専門相談を検討している
これらを確認できていれば、収納環境が原因となるカビの再発リスクを大きく下げられます。
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7. 着物のカビに関するQ&A

最後に、着物のカビについてよくある疑問をQ&A形式でまとめました。
気になる点をチェックしながら、対処や予防の参考にしてください。
Q1. 着物の白カビは他の着物にうつる?
収納内の湿気が高い状態が続くと、胞子が付着して他の着物にも広がる可能性があります。
白カビが見つかった着物は別に分け、同じタンスや衣装箱に入っていた着物や帯も点検しましょう。
広げないためには、早めに隔離することが重要です。
Q2. 白い粉が少しだけなら自分で取っても大丈夫?
表面にうっすら付いている程度なら、乾いた布やブラシで軽く払い、陰干しする応急処置で落ち着くことがあります。
ただし、素材によっては傷みやすいため、こすったり濡らしたりするのは避けましょう。
払っても戻る、臭いが残る、範囲が広い場合は専門店に相談するのがおすすめです。
Q3. 再発を防ぐには何を優先すればいい?
再発防止で特に大切なのは「着用後の陰干し」「収納の換気」「除湿の継続」です。
収納前に陰干しで湿気を抜き、タンスや押入れは定期的に開けて風を通しましょう。
除湿剤とたとう紙も定期的に状態を確認し、必要に応じて交換すると安心です。
8. まとめ
着物に白い粉状のものが付いていたら、まずはカビかどうかを見極めましょう。
防虫剤の再結晶など別の原因の可能性もあるため、こすらず陰干しして様子を見てください。
カビの疑いがある場合は、「広げないこと」が最優先です。
他の衣類から隔離し、作業するなら換気も行いましょう。
白カビであれば、乾いた布やブラシで軽く払い、日陰で干す応急処置で落ち着くこともあります。
ただし、着物は繊細な素材が多く、無理に触るほどシミや変色につながることもあります。
不安がある場合は、着物専門のクリーニングや悉皆屋に相談するのが安心です。
菌まで処理したいなら、ガス滅菌という選択肢もあります。
カビを除去できたあとは、再発しないように次の対策を取り入れましょう。

また、カビは収納内で広がることもあるため、タンスや押入れ側の換気や除湿など、収納環境の対策もあわせて行うことが大切です。
大切な着物を長く美しく保つために、できることから少しずつ続けていきましょう。




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