
押入れや実家の収納から久しぶりに取り出したレコードに、白い粉のような汚れや黒い斑点、カビのようなにおいが付いていることがあります。
レコードにカビを見つけたとき、「そのまま再生してよいのか」「アルコールで拭いてよいのか」と迷う方も多いでしょう。
レコードは、盤面、センターラベル、紙ジャケット、内袋など、素材ごとに適した対処方法が異なります。
誤った方法で清掃すると、音溝や印刷面を傷めるおそれがあるため注意が必要です。
この記事では、カビ取りの専門家が、レコードに生えたカビへの対処方法、避けたい掃除方法、再発を防ぐ保管方法を解説します。
大切なレコードを傷めないためにも、正しい対処方法を確認していきましょう。
| この記事でわかること |
| ・カビが付いたレコードの初期対応 ・盤面、ジャケット、内袋ごとの対処方法 ・レコードの種類に応じた正しい清掃方法 ・カビがあるレコードを再生できるかどうか ・カビを再発させない保管方法 |
目次
1.レコードにカビを見つけたときの初期対応

レコードにカビのような汚れを見つけても、すぐに再生したり、強くこすったりしないことが大切です。
まずは清潔なレコードから分け、盤面だけでなく、ジャケットや内袋の状態も確認しましょう。
レコードには、主に次のような種類があり、それぞれ素材や適した清掃方法が異なります。
- LP盤:アルバムによく使われる直径12インチ程度のレコード。一般的には塩化ビニル製
- EP盤:7インチサイズが多く、シングル盤より長く収録できるレコード。一般的には塩化ビニル製
- SP盤:LP盤が普及する前から広く使われたレコード。多くはシェラック系で、シェラック製にはアルコールを使用しない
種類や材質が分からない場合は、自己判断で水洗いやクリーナーによる清掃をしない方が安全です。
1-1.そのまま再生せず、ほかのレコードから分ける
カビや大量の汚れが付着したレコードは、清掃前に再生しない方がよいでしょう。
音溝の汚れはノイズの原因となり、針先やターンテーブルのマットに付着するおそれがあります。
カビが疑われるレコードは、清潔なものと分け、袋や箱へ入れて一時的に隔離してください。
ただし、レコードやジャケットが湿っている場合は、密閉したまま長期間放置せず、必要に応じて保存修復に詳しい専門家へ相談しましょう。
1-2.盤面・ジャケット・内袋の状態を確認する
カビは、盤面だけでなく、ジャケットの内側や内袋、付属品にも広がっていることがあります。
次の部分を順番に確認しましょう。
- レコード盤の両面
- センターラベル
- ジャケットの表面と内側
- 内袋と外袋
- 歌詞カードや帯などの付属品
- 隣に保管されていたレコード
黒や茶色のシミは、過去の水濡れや紙の劣化による変色の可能性もあり、必ずしもカビとは限りません。
判断に迷う場合は、汚れの状態を記録し、無理に清掃せず専門家へ相談しましょう。
1-3.室内で強く払ったり、こすったりしない
粉状や綿状の汚れを室内で強く払うと、カビの胞子や汚れが周囲に広がってしまいます。
また、ティッシュや硬い布でこすると、盤面の音溝を傷つけたり、紙ジャケットの印刷や表面を傷めたりすることがあります。
作業は手袋やマスクを着用し、清潔なレコードや普段生活する場所から離れたところで行いましょう。
アレルギーやぜんそくがある方は、無理に作業せず専門家へ相談してください。
1-4.家庭用のアルコールやカビ取り剤を使わない
家庭用の消毒用アルコールや浴室用のカビ取り剤は、レコードへ使用しないでください。
レコード専用クリーナーにはアルコールを含む製品もありますが、すべての盤に使えるわけではありません。
特に、シェラック製のSP盤にはアルコールを使用しないでください。
食器用洗剤、重曹、アルカリ電解水、ウェットティッシュなども、盤面や紙ジャケットを傷める可能性があります。
メラミンスポンジや研磨剤入りの製品も使用せず、盤の種類に対応した専用クリーナーを選びましょう。
住まい全体のカビリスクも確認しておきましょう
レコードにカビが生えている場合、収納棚や周辺の壁、室内の湿気など、住まいの環境が影響している可能性があります。
次のカビリスク診断で、ご自宅がカビの生えやすい環境かどうかを確認し、レコードの再発防止や日常の対策に役立てましょう。
2.レコードの白い汚れや黒い斑点はカビ?

レコードには、カビのほかにも、ホコリや皮脂、紙粉、洗浄液の残りなどが付着します。
見た目だけで決めつけず、汚れの形や付着している場所を確認しましょう。
2-1.カビとホコリ・皮脂汚れの違い
レコードの汚れは、見た目や付着の仕方から、ある程度見分けられることがあります。
| 汚れの種類 | 主な特徴 |
|---|---|
| ホコリ | 盤面全体に薄く積もったり、静電気によって音溝に付着したりする |
| 皮脂汚れ | 指紋や曇りのような跡として残る |
| カビの可能性がある汚れ | 白・灰色・緑色・黒色などの斑点や、粉状・綿状に見えることがある |
古いアセテート盤では、素材の劣化によって現れた白い物質が、カビのように見える場合もあります。
2-2.カビを疑う白い汚れ・黒い斑点・におい
白い粉や黒い斑点が、盤面だけでなくジャケットや内袋にも見られる場合は、カビの可能性があります。
特に、ジャケットの角や底面、内側、紙が重なっている部分は湿気がこもりやすいため、注意して確認しましょう。
また、目立つ汚れがなくても、カビ臭の特徴である湿った土のようなにおいを感じることがあります。
ただし、古紙や接着剤、インク、ビニールにも独特のにおいがあるため、においだけで判断せず、汚れの状態や保管環境もあわせて確認することが大切です。
2-3.見た目だけでは判断できない場合もある
レコードに付着した汚れがカビかどうかは、見た目だけでは判断できないことがあります。
判断に迷う場合は、無理にこすったり家庭用の洗剤を使ったりせず、ほかのレコードから分けて保管しましょう。
高額盤や希少盤、サイン入りジャケットなど、価値の高いものは家庭で無理に清掃せず、レコードや紙資料の保存修復に詳しい専門家へ相談してください。
3.レコードにカビが生える主な原因

レコードのカビは、湿気や汚れ、保管環境などが重なることで発生します。
ここでは、主な原因を3つに分けて解説します。
3-1.盤面に皮脂やホコリが残っている
盤面に付着した皮脂やホコリなどの汚れは、カビが生育しやすくなる一因です。
レコードを持つときは音溝へ直接触れず、外周とセンターラベル付近を持ちましょう。
再生前後に専用ブラシでホコリを取り除くことも大切です。
3-2.紙ジャケットや内袋が湿気を吸っている
紙ジャケットや紙製の内袋は、空気中の湿気を吸収しやすい素材です。
高湿度の状態が続くと、紙や接着剤、表面の汚れなどを利用してカビが生育することがあります。
特に、ジャケットの角や底面、折り返し部分、帯や内袋が密着している場所は注意が必要です。
湿式で盤面を清掃した場合も、十分に乾燥させてから内袋へ戻しましょう。
3-3.収納場所に湿気やカビが発生している
レコードにカビが生えた場合は、保管していた場所も確認しましょう。
押入れやクローゼット、外壁に密着した棚、床に直接置いた段ボールなどは、湿気がこもりやすい場所です。
次のような状態がある場合は注意してください。
- 棚が外壁に密着している
- 部屋や収納を長期間閉め切っている
- 壁や棚板にもカビがある
- 結露や漏水の跡がある
- 段ボールが湿っている
- 除湿機が短期間で満水になる
段ボールや木製の箱を冷たい床や外壁に接して置くと、湿気を吸収し、中のレコードやジャケットにもカビが広がる可能性があります。
4.カビが生えたレコード盤の掃除方法
一般的なLP盤やEP盤に付着した軽い汚れであれば、種類や状態を確認したうえで、専用の道具を使って清掃できる場合があります。
ここでは、掃除前の確認から乾燥までの流れを順番に解説します。
4-1.掃除前にレコードの種類と状態を確認する
清掃前に、レコードの種類と盤面の状態を確認します。
ソノシートやアセテート盤など、一般的なLP盤・EP盤とは材質や構造が異なるレコードもあります。
次のような場合は、無理に自分で清掃しない方が安全です。

専用クリーナーを使用する場合も、対応している盤の種類と使用方法を必ず確認してください。
4-2.掃除に必要な道具を準備する
清掃方法に応じて、次のような道具を用意します。
軽いホコリを取るだけであれば、すべてをそろえる必要はありません。
- 乾式のレコード専用ブラシ
- 盤の種類に対応した専用クリーナー
- 毛羽立ちにくい専用クロス
- 清潔な内袋
- 手袋(薄手のゴム手袋やニトリル手袋)
- センターラベルの保護器具(湿式清掃や水洗いをする場合)
- 乾燥用スタンド(湿式清掃をする場合)
軽いホコリは、乾式の専用ブラシで取り除きます。
汚れが音溝に入り込んでいる場合は、対象の盤に使用できる湿式クリーナーを検討しましょう。
クリーナーは製品の使用方法に従い、紙製のセンターラベルを濡らさないよう注意してください。

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4-3.レコード盤を掃除する手順
レコード盤は、音溝に沿ってやさしく清掃することが大切です。
強くこすったり、爪やメラミンスポンジ、硬いブラシを使ったりすると、傷の原因になるため避けましょう。
① 表面の大きなホコリを取る
乾式のレコード専用ブラシを使い、盤面に付着した大きなホコリを取り除きます。
強く押しつけず、音溝に沿ってやさしく動かしましょう。
② センターラベルを保護する
湿式クリーナーを使用する場合は、紙製のセンターラベルが濡れないよう注意します。
水洗いする場合は、専用の保護器具を使用してください。
③ 専用クリーナーで盤面を清掃する

レコードの種類に対応した専用クリーナーを、製品の使用方法に従って使います。
記載された使用量を守り、音溝に沿ってやさしく清掃しましょう。
④ 汚れと水分を取り除く

毛羽立ちにくい専用クロスなどを使い、浮き上がった汚れや余分な水分を取り除きます。
盤面に汚れやクリーナーが残らないようにしてください。
⑤ 十分に乾燥させる
清掃後は、盤面に水分が残らないよう十分に乾燥させます。直射日光やドライヤーの熱風は避け、ホコリの少ない場所で乾かしましょう。
片面が乾いたことを確認してから裏返し、反対側も同じ手順で清掃してください。
清掃後は、カビや汚れのない清潔な内袋へ移します。
5.ジャケットや内袋にカビがある場合

ジャケットや内袋にカビが見られる場合は、盤面とは分けて状態を確認する必要があります。
ここでは、紙ジャケットや内袋を扱う際の注意点を解説します。
5-1.紙ジャケットは無理にこすらない
紙の表面が安定しており、付着しているものが軽いホコリだけであれば、柔らかいブラシでごく軽く取り除けることがあります。
一方、粉状や綿状のカビが見える場合は、こすったりブラシで払ったりしないでください。
紙が湿っている、剥がれている、波打っている、貼り付いている場合は、自分で清掃せず専門家へ相談しましょう。
5-2.ジャケットの内側や付属品も確認する
ジャケットは表面だけでなく、内側、底面、背表紙、折り返し部分まで確認します。
歌詞カードや帯、解説書なども一枚ずつ見ておきましょう。
紙同士が貼り付いている場合は、無理に剥がさないでください。
外袋に汚れやにおいがある場合は、新しいものへ交換します。
5-3.カビやにおいのある内袋は交換する
内袋にカビやシミ、強いにおい、べたつきがある場合は、新しいものへ交換しましょう。
オリジナル内袋に価値がある場合は、レコード盤とは分けて保管し、清掃したレコードは新しい内袋へ移してください。
5-4.シミやカビ臭は残ることがある
カビを取り除いても、シミや変色、波打ち、カビ臭が残ることがあります。
芳香剤や消臭スプレーを直接使用すると、シミやにおい残りの原因になることがあります。
また、天日干しは退色や変形につながるため避けましょう。
6.レコードのカビを再発させない保管方法
カビの再発を防ぐには、レコードだけでなく、再生機器や収納場所、室内の湿度も見直す必要があります。
ここでは、レコードをカビから守るための保管方法を解説します。

6-1.レコード針やプレーヤーも清掃する
カビや汚れが付いたレコードを再生していた場合は、針先やターンテーブルのマット、ダストカバーなども確認しましょう。
針先は非常に繊細なため、指や布でこすらず、スタイラス専用クリーナーを使用してください。
使用したブラシやクロス、隣に保管していたレコードにも汚れがないか確認します。
6-2.壁や床から離して立てて保管する

レコードは横積みにせず、できるだけ垂直に立てて保管します。
斜めに寄りかかった状態や横積みが続くと、盤面の反りやジャケットの変形につながることがあります。
収納棚は壁に密着させず、背面に少し隙間を設けましょう。
床へ直接置かず、直射日光や暖房器具の近くも避けてください。
6-3.湿ったまま段ボールや容器にしまわない
段ボールは湿気を吸収しやすいため、床や外壁に接する場所での長期保管には注意が必要です。
密閉容器を使う場合も、レコードやジャケットが十分に乾いていることを確認してください。
湿気を含んだまま密閉せず、収納後も定期的に状態を確認しましょう。
6-4.湿度計や除湿機で湿気を管理する
保管場所には湿度計を設置し、相対湿度は60%未満を目安に管理します。
梅雨や夏季など湿度が高い時期は、除湿機やエアコンの除湿運転を活用しましょう。
除湿機が満水で停止していないか、乾燥剤の交換時期が過ぎていないかも定期的に確認してください。

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6-5.収納棚や部屋を定期的に確認する
季節の変わり目や梅雨前後には、棚板の裏側、棚の背面、壁、床、窓周辺、押入れの奥などを確認しましょう。
カビ臭が繰り返す場合や、壁や棚にもカビがある場合は、結露や漏水、換気不足などが関係している可能性があります。
レコードだけでなく、保管場所全体の原因を確認することが大切です。
7.レコードのカビに関するよくある質問

レコードにカビを見つけたときは、再生できるか、においは取れるかなど、さまざまな疑問が生じます。
ここでは、レコードのカビについてよくある疑問をまとめました。
7-1.カビが生えたレコードは再生できる?
一般的なLP盤やEP盤であれば、盤面を適切に清掃し、完全に乾燥させた後に再生できる場合があります。
ただし、汚れが付いたまま再生すると、ノイズが発生したり、針先や再生機器に汚れが付着したりする可能性があります。
ひび割れや大きな反り、べたつき、表面の剥がれがある場合は、再生を控えましょう。
7-2.レコードのカビ臭は取れる?
表面のカビや汚れを取り除き、十分に乾燥させることで、においが軽減することはあります。
ただし、紙ジャケットや内袋の内部までにおいが入り込んでいる場合は、完全に取れないこともあります。
芳香剤や消臭スプレーは直接使用せず、収納棚や部屋にも原因がないか確認しましょう。
7-3.複数のレコードにカビがある場合は?
複数のレコードにカビがある場合は、胞子や汚れが広がるおそれがあるため、室内で一斉に払ったり清掃したりしないでください。
材質や清掃方法が分かるものは一枚ずつ対処し、収納棚や壁にもカビがある場合はカビの専門家へ相談しましょう。

8.まとめ
レコードにカビのような汚れを見つけた場合は、すぐに再生したり、家庭用のカビ取り剤を使用したりせず、まずは盤面、ジャケット、内袋の状態を確認しましょう。
一般的なLP盤やEP盤に付着した軽い汚れであれば、レコードの種類と材質を確認したうえで、次の手順で清掃できる場合があります。

一方、次のような場合は、無理に自分で清掃しない方が安全です。

カビの再発を防ぐため、清掃後は以下のような対策も行いましょう。

盤面だけでなく、内袋や再生機器、収納棚、周辺の壁まで確認し、カビや湿気の原因を残さないことが大切です。
清掃後は保管環境も定期的に見直し、大切なレコードを良い状態で長く楽しみましょう。




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