砂壁のカビをリフォームで解決するには?
「実家の和室の砂壁部分にカビが生えて困っています。今後のことを考えて思い切ってリフォーム工事をして綺麗にしたいと思っていますが、リフォームをする際の注意点などを教えてください。」
砂壁に生えたカビは除去が難しいです。カビを一掃できるなら思い切ってリフォームをしようと考える質問者様の気持ち、よく分かります。
しかし、リフォーム工事をしてもカビが再発してしまうことがあります。そこで今回は砂壁にカビが生えた原因とカビを再発させないリフォームについてご紹介していきます。
目次
1. リフォームの前にまずは原因究明を!
砂壁をリフォームするにあたって、なぜカビが生えてしまったのかその原因を探る必要があります。カビが生えてしまった何らかの要因があるはずで、それを解決しないことにはリフォームをしても再びカビが生えてしまう可能性があります。
カビは栄養分と酸素、水(湿気)、適度な温度の4つの条件が揃うと発生します。
具体的には次のような要素がカビの生育に関係しています。
① 砂壁に付着した埃や汚れがカビの栄養源になっている
砂壁は表面が凸凹しており埃や汚れが付着しやすく、取れにくいです。またそのざらざらした見た目から砂なのか汚れなのかぱっとみただけでは分かりにくいです。そのため手入れすることなくなんとなく放置しているというご家庭も多いのではないでしょうか。埃や汚れはカビの栄養源となり、やがてカビは目に見える形となって現れます。
② 部屋の日当たりが悪い
日光には殺菌作用がありますが日当たりが悪いとその効果が得られません。特に北側の部屋は太陽が当たらずじめっとしています。部屋の日当たりが悪いと砂壁だけでなく部屋全体のあらゆるところにカビが生えやすくなります。
③ 部屋の換気・掃除不足
砂壁のある和室が物置や仏間になっているなど普段あまり人が出入りせず換気・掃除が不十分だとカビの栄養源となる埃が蓄積し、湿気も溜まることでカビが生えやすい環境ができてしまいます。
砂壁には調湿効果があり室内の余分な湿気を吸収し、乾燥しているときには湿気を放出してくれる優れた作用があります。しかし、換気不足で湿気が溜まる一方だと砂壁の内部には湿気がどんどん溜まっていき、あっという間にカビが生えてしまいます。
④ 布団や畳、掛け軸など室内の他の部分に生えたカビが胞子を飛ばしている
砂壁がカビの発生源とは限りません。室内にある布団や畳、壁にかかった掛け軸などが砂壁のカビに繋がっていることもあります。畳は湿気を吸いやすく、自然素材であることからカビが生えやすい素材でもあります。
畳に触れてみて、なんとなくひんやりとして湿っている、あるいは既にポツポツと黒いカビのようなものが生えているといった場合は畳と砂壁の間、つまり部屋全体にカビの胞子が飛び交っていると考えられます。
⑤ 壁と家具の距離が近い
砂壁に沿ってくっつけるようにタンスや棚など家具を置いていませんか?壁と家具の距離が近いと家具と壁の間が湿気を帯び、逃げ場がなくなった湿気は溜まっていきます。掃除のしにくさから埃も蓄積されていきます。
久しぶりにタンスをずらしてみると見事に裏側の壁にだけカビが生えている、ということもあります。また、部屋の隅は吹き溜まりになるので部屋の四隅に合わせて家具を置いている場合も角部分にカビが生えてしまいます。
⑥ 窓の結露
窓を囲うように砂壁にカビが生えているときは、窓の結露が原因です。窓の結露を拭き取らずにいると窓のサッシや障子の木枠にカビが生え、そこからさらに根を伸ばして壁に広がっていきます。
砂壁は、耐火性や断熱性、消臭効果があり、加えて調湿効果がある優れた壁材です。本来であればカビも生えにくいです。しかし、砂壁のある部屋はほとんどの場合和室であり、和室に使われる材料は自然素材のものが多くなります。カビは化学素材のものよりも自然素材のものの方が栄養源にしやすいため砂壁のある和室の空間はカビのエサの宝庫です。そこに、さきほど挙げたような要素が加わることでカビの成長を加速させてしまうのです。
2. カビ取りのみorリフォームの見極めは?
今回はリフォームを前提としたご質問内容ですが、砂壁にカビが生えたときにカビ除去のみで済む場合とリフォーム工事をした方がよい場合があります。まず、カビ取りのみで済む場合はカビの原因が掃除や換気不十分であったり自然発生(温度20℃以上、湿度60%以上、栄養源がある)によるものの場合です。
つまり、生活環境を改善すればカビ取り後の再発の可能性が低いと考えられる場合はカビ除去のみで済むことがあります。一方で、壁内部の結露や漏水など環境改善のしようがないものについては根本解決を図るためにリフォームをおこないます。
ただし、カビがひどい、砂壁がボロボロと崩れている・ひび割れているといったときには理由はどうあれリフォーム工事が必要になります。自力で何とかしようと思う方もいるかもしれません。
しかしカビ除去もリフォーム工事も素人には難しく砂壁となると難易度はさらに上がります。消毒用エタノールである程度のカビ取りも可能ですが完全に除去はできない上、カビの色素は残ってしまいます。
使う場合はあくまでも業者が来るまでの応急処置として使用しましょう。また、市販のカビ取り剤は壁が脱色したり薬剤が壁に浸透しすぎてしまうことがあるため使用はやめましょう。砂壁にカビが生えたらカビ取り業者に相談し、その上でカビ除去にするかリフォーム工事の方がよいか検討しましょう。
3. 砂壁をリフォームする際に押さえるポイント
除カビせずに塗装はしないこと!
実際に過去にあった事例なのですが、カビに関する知識のあまりないリフォーム業者に依頼したところ、上から砂壁を塗り直すだけで終わったそうです。結果、砂壁の内側のカビを殺菌しないまま上から塗装を重ねたため、何度もカビが再発して、どんどんカビが広がってしまいました。
カビは、塗装を上から重ねただけでは、死滅していませんので、水分や気温など条件が重なることで再発してしまいます。カビをしっかりと除去してから、リフォーム工事を行うようにしましょう。
砂壁のリフォーム手順
カビに侵された砂壁をリフォームする際には、
① 砂壁のカビの原因を分析する
② カビの原因となった箇所の除カビ・修理を行う。
③ リフォーム工事を行い、防カビ加工を行う。
ということを覚えておきましょう。ただ砂壁を剥がして新しいものに張り替えるだけではカビを繰り返してしまいます。カビの原因を分析し、リフォーム工事の際には砂壁の張り替えとともに防カビ加工も行います。また、カビの原因箇所が他にある場合は、その場所のカビ除去も行う必要があります。
業者にリフォーム工事を依頼する際には、リフォームの技術や値段だけでなく根本解決できるようなサービスがあるかどうかも考慮して検討することが大切です。
4. リフォーム後のカビ対策
カビを繰り返さないためにもリフォーム後のカビ対策は非常に重要です。基本的にはこまめな掃除と換気をおこない湿気やホコリをためないことを心掛けます。
必要に応じてサーキュレーターや空気清浄機を使って空気を循環させるのもおすすめです。
アイリスオーヤマ サーキュレーターアイ
出典: Amazon
- 砂壁と近い距離に家具を置かないこと
- 結露はこまめに拭き取ること
- 布団を敷きっぱなしにしないこと
- 物置に使用する場合も衣類や物を入れすぎないこと
など、これまで砂壁のカビの原因となっていた要素があればそれらを改善していく必要があります。掃除がなかなかできないときには消毒用エタノールを使って、部屋全体に噴霧するだけでもカビ予防になります。
5. まとめ
今回は砂壁に生えたカビの原因やリフォームする際のポイントをお伝えしてきましたがまとめると、
● 砂壁のカビの原因は部屋の換気・掃除不足により砂壁が湿気を吸収しすぎることや、和室にはカビの栄養源となる自然素材のものが多いこと、窓の結露によるものなど室内環境の様々な要素がカビの発生につながっている。
● 砂壁のカビは自然発生の場合はリフォームではなくカビ除去のみで済むことがある。
● カビがひどい場合や砂壁が崩れたりひび割れたりしている場合はリフォームした方がよい。自力で解決せずカビ取り業者に相談し、リフォーム&カビ取りを検討する。
● リフォーム工事の際は、カビの原因分析と防カビ施工のサービスがある業者を選ぶ。
● リフォーム後はこまめな掃除と換気を心掛ける。カビの原因となった要素があれば改善する。
となります。砂壁は正しくメンテナンスされれば、湿度調整や断熱効果が得られ、それにより私たちは快適に過ごすことができます。
とりあえず見た目にカビがなくなればいい、と壁を張りかえたり、砂壁塗装を塗り重ねたりするだけの”なんちゃって”リフォームではなくカビを根本からなくし、砂壁が本来持つよさを十分に発揮していけるようなリフォームをしましょう。