プロジェクターのレンズのカビを防ぐ方法
「久しぶりに押入れに収納していたプロジェクターを出したら、レンズにカビが生えているようです。カビ対策の方法とプロジェクターのカビを防ぐ保管方法が知りたいです。」
プロジェクターのレンズにカビを見つけると、こんなところにもカビが生えるのかと驚きますよね。もしくはカビとは気づかず、レンズの表面にクモの巣状や雪の結晶のようなものを見つけて調べてみたらどうやらカビのようだ、と知った方もいるかもしれません。それと同時に、このカビは取れるのかと心配になりますよね。
そこで今回はプロジェクターのレンズのカビ取り方法と適切な保管方法についてご紹介していきます。
1. プロジェクターのレンズにカビが生えたら?
1-1. プロジェクターのレンズのカビ取り方法
基本的には、プロジェクターにカビが生えてしまった場合、自己流の方法で除カビ作業をし、故障してしまうリスクもありますので、まずはプロジェクターメーカーに連絡をして適切なカビ取り方法を聞いてみましょう。
保証期間内であれば、修理やレンズ交換など対応してくれる場合もあります。その他、修理業者などでレンズの除カビを依頼するという方法もありますので、検討してみましょう。
しかし、保証がない場合や、メーカーに問い合わせても解決できなかった場合、修理業者に依頼すると新品を買った方が良いくらいの見積りだった場合、あまりお金をかけずに解決したい場合などに、応急処置としてできる除カビ方法を解説していきます。
プロジェクターのレンズのカビ取り方法です。カビ取りには以下のものをご用意ください。家電量販店や通販でレンズのクリーニングに必要なアイテムをまとめたキットも販売されていますのでそういったものを購入してもいいでしょう。
~用意するもの~
- マスク
- ゴム手袋
- 無水エタノール
- エアーブロアーやエアーダスター
- レンズ用クロス(清潔な眼鏡拭きでもOK)
健栄製薬 無水エタノール
出典:Amazon
~手順~
① マスク、ゴム手袋を着けて身体を保護します。
② プロジェクターの電源が切れていることを確認し、取扱説明書通りにプロジェクター本体からレンズを取り外します。(取り外した方がより細かい部分まで丁寧に作業が可能になりますが、取り外せない場合はそのままカビ取りをしていきます。)
③ クロスに無水エタノールをつけ、レンズのカビを拭き取ります。
④ カビが取れたらエアーブロアーまたはエアーダスターを使って埃を飛ばして完了です。
1-2. なぜ無水エタノールなの?消毒用エタノールではだめ?
家に無水エタノールはないけど消毒用エタノールならある、消毒用エタノールではだめなのかと考える方もいるかもしれません。消毒用エタノールと無水エタノールの違いはアルコール濃度です。
無水エタノールは水分をほぼ含まない純度の高いエタノールのことです。中身がほぼアルコールですので非常に揮発性が高いという特徴があります。
一方で消毒用エタノールは無水エタノールと比べるとアルコール濃度が低いです。そのため消毒用エタノールはある程度その場に残ります。その場に残ることで消毒の効果を発揮することが可能なのです。
本来であれば消毒用エタノールを使いたいところなのですが、今回のようにプロジェクターという電化製品のカビを対象にしていますので、水分が残ってしまう消毒用エタノールを使用することができません。
プロジェクターのレンズのカビ取りには消毒用エタノールではなく無水エタノールを使うようにしましょう。
1-3. カビが残ってしまった場合は?
上記の方法でカビ取りをしてもカビが残ってしまった場合は、レンズをクリーニングしてくれる業者に依頼するのも一つの方法です。大型の家電量販店や購入したメーカーのサポートサービスに相談してみましょう。
多くはカメラのレンズを対象にしているためプロジェクターのレンズのクリーニングを行ってくれるかは難しいところですが困ったときは一度相談してみてもいいでしょう。それでも対処ができない場合はレンズを交換しましょう。
2. プロジェクターのレンズに生えるカビの特徴
2-1. 乾燥した場所を好む(好乾性)のカビが生える
カビは湿度の高い場所に生えますが、実は比較的乾燥した場所を好むカビもいます。レンズにはカワキコウジカビ(別名:ユーロチウム)と呼ばれる好乾性のカビが生えます。このカワキコウジカビはレンズ以外にも本や壁、皮革製品や衣類など乾いた場所や物に発生します。
2-2. カビの成長過程には二段階ある
レンズに生えるカビの成長過程には大きく分けて二段階あります。初期段階では、菌糸がクモの巣状にレンズ正面に広がっていきます。この段階であれば丁寧に拭き取ればある程度カビを取ることができます。
しかし、成長が進むにつれ、菌糸から多様な分解酵素が分泌されます。分泌された分解酵素は周囲のレンズを侵食してしまいます。
この段階になるとレンズが腐食した状態になりいくら表面のカビを取り除いても元通りにすることはできません。
3. プロジェクターのレンズにカビが生える原因
3-1. 手垢や皮脂、ホコリが栄養源になっている
カビは有機物を栄養源にしますがレンズのガラスは無機物です。カビはレンズそのものを栄養源にするのではなく、レンズに付着した手垢や皮脂、ホコリを栄養源にしているのです。一見きれいに見えるレンズも意外と皮脂が付いていたり隙間にホコリが溜まっていることがあります。それらを栄養源にしてカビが生えてしまいます。
3-2. レンズに発生する結露
レンズは窓や車のガラス同様、冷えると結露します。押入れのように日の当たらないひんやりした場所に長期間保管しておくとプロジェクターのレンズが結露し、カビが生えてしまいます。結露しやすい冬場は要注意です。
3-3. 保管場所の湿度が60%以上になっている
カビは湿度が60%以上になると徐々に活動を始めます。プロジェクターのレンズに生えるカワキコウジカビは湿度が65%程度でも生育します。逆に、湿度が60%以下であればどんなカビも生育できません。
カビはお風呂場や洗面所などのいかにも湿度が高そうな場所に発生するイメージがありますが、湿度60%を超える場所は全てカビのリスクがあると考えた方がよいでしょう。
3-4. 通気性の悪い場所や入れ物で保管している
カビは、じめじめした場所を好むため日の当たらない場所や風通しの悪い場所に保管しているとカビが生えてしまいます。さらに、押入れのように寒暖差の大きい場所に保管しているとレンズに結露も発生しやすいです。
特に、密閉されたプラスチックボックスに入れて保管していると、容器の外よりも中の方が暖かい状態になるためプロジェクターのレンズに結露が発生することがあります。
また、購入した当初のダンボールや紙箱に入れている場合も要注意です。ダンボールや紙箱、新聞紙等は湿気を吸いやすく長期間放置していると次第にカビの温床になっていき内部のプロジェクターにまでカビの影響が及びます。
4. プロジェクターのレンズのカビを防ぐ方法
4-1. 通気性のいい場所で保管
押入れやクローゼットは空気が滞りがちなため可能であれば室内で保管することをおすすめします。その際は直射日光の当たらない場所に保管しましょう。
また、レンズカバーを装着し、ホコリが被らないよう布をかぶせるなどの工夫をしましょう。普段室内を掃除するタイミングでホコリや汚れを払い、お手入れをします。
4-2. ドライボックスまたは専用の収納バッグ(ケース)+乾燥剤を利用する
室内に置いておくスペースがない、頻繁には使わないから普段は押入れにしまっておきたいという方はドライボックスや収納バック(ケース)に乾燥材を入れて保管するのもおすすめです。
ドライボックスは湿度計が付属されている物がいいです。また、プロジェクター専用の収納バッグも販売されていますので、そこに乾燥材を一緒に入れて保管するものいいでしょう。アクセサリー類もまとめて収納できるというメリットもあります。
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4-3. プロジェクターの使用後は拭き取りを
プロジェクターを使った後は本体やレンズについた汚れを優しく拭き取りましょう。見た目に汚れていなくても皮脂は付着していますので使用後はエアーブロアーとクロスを使って埃や皮脂を拭き取ります。カビの栄養源を残さないようにしてから片付けることが大切です。
5. まとめ
今回はプロジェクターのレンズのカビ取り方法とその保管方法についてお伝えしてきましたがまとめると、
● プロジェクターのレンズのカビは無水エタノールで除去する。
● 自力で取れない場合はクリーニング業者に依頼する。それでも対処できないときはレンズの交換を。
● プロジェクターのレンズに生えるカビの主な原因は人の皮脂や手垢。
● 通気性の悪い場所や入れ物で保管することによる湿気、また寒暖差のある場所で保管することでレンズに発生する結露によってもカビが生える。
● カビを防ぐためにプロジェクターは直射日光の当たらない通気性の良い場所で保管する。ドライボックスや専用の収納ケースを利用するのもおすすめ。プロジェクターを使った後はレンズと本体の拭き取りをしてカビの栄養源を残さないようにする。
となります。適切な環境で保管し、きれいな映像でホームシアターを楽しんでくださいね。
<参考>
● 文部科学省 『カビ対策マニュアル 基礎編』
● 竹下典夫 『繰り返されるカビの菌糸成長 超解像イメージングで明かされた周期的変動』 2018
日本農芸化学会 生物と化学
● 浜田 信夫 『カビの取扱説明書』 2020 角川書店
● 高鳥 浩介 『カビのはなしミクロな隣人のサイエンス』 2013 朝倉書店