土壁に生えたカビの正しい落とし方!プロが教える応急処置とカビ対策

【質問】
「和室の土壁にカビが生えていることに気付きました。カビ取りに挑戦してみたけど、ザラザラしていて上手くできません。それでも少しカビは取り除けましたが、すぐに再発して、以前よりも広がってしまいました。自力で土壁のカビ取りをする方法はないですか?」

土壁は、練った土を塗り重ね、表面を漆喰や砂などで仕上げている日本の伝統的な壁の1つです。
土壁には湿度の調整や防臭という機能があり、快適な空間を作り出すことができます。

しかし土壁は、カビ取り剤が使用できなかったり、擦ると剥がれ落ちてしまったりするため、カビが発生してしまった場合、除去するのが非常に困難です。
そのため、自力でカビ取りしようとしても上手く行かず、頭を悩ませている方も多いでしょう。

結論を申し上げると、自力での土壁のカビ取りはおススメできません。
自力でカビ取りしても、カビが完全に除去できず再発を繰り返したり、素材を傷めてしまう恐れがあるからです。
そのため、無理に自分でカビ取りしようとはせずに、カビ取りの専門業者に依頼するのが一番です。

しかし、梅雨などカビ取り業者が繁忙期の時期は、カビ取りしてもらうまで時間が掛かるケースもあります。
カビは時間経過とともに範囲を広げていくため、少しでもカビの拡散を食い止めたいと考える方もいるでしょう。

そこでこの記事では、土壁にカビが発生した場合の応急処置方法を解説します。
土壁にカビが発生する原因や二度と再発しないためのカビ対策も紹介するので、是非最後までこの記事をお読みください。

この記事でわかること
・土壁にカビが発生する原因
・土壁のカビの応急処置
・土壁のカビを再発させないための予防

1.土壁のカビ取りは難しい!信頼できるカビ取り業者に相談

冒頭でもお伝えしていますが、土壁のカビ取りは非常に難しいため、カビ取り業者に依頼することを強くおすすめします。

土壁は非常にデリケートな素材のため、カビ取りを誤ると壁の表面が剥がれたり、ひび割れが生じたりするリスクが高くなります。
特に、市販の強力なカビ取り剤は土壁にダメージを与えやすいため、使用は控えた方がいいでしょう。

専門業者は、土壁の特性を理解し、適切な方法でカビを除去する知識と技術があります。
また、業者に依頼することで、カビの再発を防ぐための予防策も講じてもらえるため、長期的に見ても安心です。

そして業者選びは非常に大事です。
例えば、カビの知識があまりないリフォーム業者に依頼した場合、カビ取りをしっかりと行わずに上から重ね塗りしてしまうということがあります。
重ねて塗ってもカビはその下で生きているため、しばらく経ってまた表面にでてきてしまうでしょう。
そのため、カビを根絶しなければカビは再発を繰り返し、再度カビ取り費用やリフォーム費用が発生する恐れがあるのです。

このような事態を防ぐためにも、カビの知識があって、技術力のあるカビ取り業者に依頼するのがベストです。
業者選びの際には、過去の実績や顧客の口コミを参考にし、信頼性の高い業者を選ぶことをおススメします。

無料相談や無料見積もりを提供している業者も多いので、複数の業者から見積もりを取り、比較検討してみてください。

2.土壁のカビを発見してから業者が来るまでにするべきこと

カビは何も対処せずに放置していると、どんどん拡散して、悪化する恐れがあります。
そのため、これ以上被害が拡大しないように、カビ取り業者が来る前に以下のことを行うようことをおススメします。

2-1.天気の良い日に窓を開けて換気をする

天気の良い日には窓を開けて、換気するようにしましょう。
室内の湿気を外に逃がし、新鮮な空気を取り入れることで、カビの繁殖を防ぐことができます。

特に梅雨時や雨が続く季節は、室内に湿気が溜まりやすくなるため、晴れた日はできるだけ窓を開け放して湿度を下げてください。
また、換気を行う際には、窓だけでなく、ドアも開けて風の通り道を作り、効率的に空気を入れ替えましょう。

2-2.荷物を移動させて不用品を処分する

カビは周囲に拡散するため、カビが発生している場所の近くにあるものは移動させて、カビの影響を受けないようにしてください。

特に、布製品や紙製品などはカビが生えやすいので、カビが発生していないか確認し、不要なものは廃棄しましょう。
必要なものであれば、カビ取りを行ってください。

■関連記事■布製品に黒カビ発生!?正しいカビ取りとカビ対策を徹底解説
■関連記事■書籍・本に生えたカビを除去して再発を防ぐ方法

カビ取りをプロに任せる場合、衣類ならクリーニング、書籍などの小物ならガス滅菌をおススメします。

ハーツクリーンのガス滅菌は、医療機器の滅菌にも使用されているエチレンオキサイドガスを使用しているため、しぶといカビでも死滅させることが可能です。

また、カビ取り専門のクリーニング業者のハーツクリーニングであれば、同じガス滅菌を行っているため、汚れが落ちるだけでなく、カビの根絶も可能なので、大事な服やバッグにカビが発生した時は是非ご利用ください。

2-3.除湿機やサーキュレーターを設置して湿度管理をする

カビは高湿度の環境で繁殖するため、湿度を60%以下に保つことによって、拡散を抑えることができます。

除湿機やエアコンの除湿機能を活用することで、室内の湿度を下げることが可能です。
湿度が高い日は積極的に除湿して、適度な湿度を維持してください。

また、サーキュレーターは空気を循環させることができるので、一定の場所に湿気が溜まるのを防いでくれます。
あわせて使用することで更に効果が期待できるでしょう。

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2-4.土壁のホコリを取り除く

ホコリは湿気を吸収しやすく、カビの温床になりやすいため、柔らかいハタキやブラシを使って払い落としましょう。
そうすることで、カビの栄養源を減らすことができます。

ただし、土壁はデリケートな素材なので、強く擦らないようにしましょう。
また、ホコリを除去する時に同時にカビが拡散する恐れがあるため、換気をしながら優しく払うようにしてください。

3.土壁のカビの応急処置方法

カビが発生したのが梅雨の時期だったりすると、カビ取り業者が繁忙期のため、施工まで時間が掛かることがあります。

カビ取り業者が来るのを待っている間にさらに拡散する恐れもあるため、せめて応急処置をしたいと考える方もいるでしょう。
ここでは効果的な応急処置方法を紹介するので、施工まで時間が掛かる際は試してみてください。

3-1.消毒用エタノールで応急処置する

カビはアルコールに弱いため、消毒用エタノールで除菌することが可能です。
ただし、漂白効果はないため、黒カビなど色素が沈着しているものを落とすことはできません。

また、土壁の種類によっては変色する可能性もあるため、目立たない場所で試して変化しないか確認をした上で、実施してください。

準備するもの

  • 消毒用エタノール
  • スプレーボトル(必要な場合)
  • マスク
  • ゴム手袋

出典:Amazon

カビ取り手順

  • ①事前準備を行う

カビ取り作業を始める前に窓を開けて換気し、マスクやゴム手袋を身に付けてください。
また、土壁のカビを除去する前に、土壁のホコリなどをハタキなどで落としておきましょう。

  • ②消毒用エタノールを吹きかける

カビが発生している箇所と、その周辺の土壁に消毒用エタノールを噴霧しましょう。
エタノールで色落ちしてしまうこともあるので、目立たない場所で試してから全面におこなってください。
また、土壁の一部分だけに噴霧すると色がそこだけ浮いて目立ってしまうこともありますので、噴霧するときは周辺の壁にもエタノールをまんべんなく拭きかけてください。

  • ③しっかり乾燥させる

土壁をよく乾燥させます。
部屋の換気をしたり、扇風機やサーキュレーター、ドライヤーなどを使用すると効率的に乾かすことが可能です。

3-2.【注意!】塩素系のカビ取り剤は土壁に不向き

黒カビを除去するには漂白効果のあるカビ取り剤が有効ですが、塩素系のカビ取り剤は土壁には不向きです。
塩素系カビ取り剤は強力な漂白効果を持ち、黒カビを効果的に除去できますが、土壁に使用するといくつかの問題が生じます。

まず、塩素系カビ取り剤は強力な化学成分を含んでいるため、土壁の素材にダメージを与える可能性があります。
これにより、土壁の表面が劣化し、修復が困難になることも考えられます。

また、カビ取り剤は使用後に水で洗い流したり、しっかりと水拭きする必要があります。
しかし土壁は水拭きできない素材のため、カビ取り剤の成分が残ってしまいます。

他にもカビ取り剤の漂白効果によって土壁の色合いが変わってしまったり、カビ取り剤のツンとした臭いが残ってしまったりなど、様々な問題を引き起こす恐れがあります。

そのため、自力でカビ取りする際は塩素系カビ取り剤の使用は避けて、消毒用エタノールや、土壁でも使用可能なカビ取り剤で除菌するようにしましょう。
また、それも不安ということであれば、換気や除湿を徹底的に行ってカビの拡散を極力食い止めて、カビ取り業者が来るのを待つようにしてください。

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4.土壁とはどんな素材?メリット・デメリットは?

カビ取りが終わったら、今度はカビが再発しないように対策する必要があります。
そして、カビ対策をするには、土壁の特徴を知っていなければいけません。

ここでは土壁の特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説します。

4-1.土壁の特徴

土壁は、粘土質の土を主材料とし、これに竹や藁などの天然素材を混ぜて補強しています。
施工方法としては、竹や藁を骨組みにして、土を塗り重ね、最後に漆喰や砂で仕上げます。
そのため、土壁は自然で素朴な風合いを持ち、日本家屋の美的要素として高く評価されています。

また、土壁は使用しているものが自然素材のものなので、廃棄時にも土に還ることができるため、環境に優しいと言われています。

4-2.土壁のメリット

土壁のメリットとしては、まず高い調湿性が挙げられます。
湿度が高い時は湿気を吸収し、乾燥している時は湿気を放出することができます。
そのため、1年通して室内の湿度を適度に保つ効果が期待できます。

さらに、断熱性防音性も高く、夏は涼しく、冬は暖かい居住空間を提供し、外部からの騒音を軽減してくれます。
また、土は燃えにくいため、耐火性に優れているのもメリットです。

4-3.土壁のデメリット

一方で土壁にはいくつかのデメリットも存在します。

メリットで調湿性があるとお伝えしましたが、湿度が高い環境が続くと土壁の中に含んだ水分によって、そこからカビが発生することがあります。
そしてザラザラした素材で水分を吸収しやすいため、カビが発生すると除去するのが非常に難しくなるでしょう。

さらに、耐久性に関しても問題があります。
土壁は湿気や水に弱く、ひび割れや剥がれが生じやすいため、定期的なメンテナンスが必要です。

また、土壁は施工が難しいため、熟練の職人による施工が必要なことが多いです。
そのため、施工には時間と手間がかかり、コストも高くなる傾向にあります。

5.土壁のカビ発生原因

続いて、土壁にカビが発生する原因について解説します。

まず、カビは以下の4つの条件が揃っている場所に発生すると言われています。

カビはジメジメしていて汚れている場所を好むため、これらの条件が満たされた場所では繁殖スピードが早くなるでしょう。

では、土壁にカビの発生条件が揃ってしまう具体的な原因について解説します。

5-1.高湿度の環境

カビの発生にとって最も重要な要素は湿度です。
カビは湿度が60%を超えると活発に動き始め、湿度が高ければ高いほど繁殖しやすいです。

土壁は自然素材でできていて調湿効果があるため、湿度が高い環境では水分を吸収します。
特に梅雨時や夏季には長期間高湿度の環境が続いてしまうため、土壁の中の水分を外に放出できず、カビの繁殖が促されるでしょう。

5-2.通気性の悪さ

通気性が悪い場所では、湿気がこもりやすくなり、カビが発生しやすくなります。
現在の住宅は密閉性が高いため、適切な換気が行われないと湿気が溜まってしまいます。

また、家具や荷物が壁にくっつけて置いてある場合、通気性が悪くなり、さらにカビが発生リスクが高まるでしょう。

5-3.結露の発生

結露も土壁にカビが発生する原因の一つです。
室内外の温度差が大きい場合、壁の表面に結露が発生し、その水分がカビの発生を促します。

冬季には暖房を使用することで室内の温度が上がり、外気との温度差が大きくなるため、注意が必要です。

5-4.壁材の特性

土壁は天然素材を使用しているため、水分を吸収しやすい特性があります。
高湿度の環境が続くと乾燥しにくく、カビの繁殖に適した環境が長時間続くことがあります。

また、土壁はデコボコしているため、空気中のホコリが付着しやすく、これがカビの栄養源となってしまいます。

5-5.外部からの水分侵入

雨漏りや漏水、地面からの湿気が壁に浸透することもカビ発生原因になります。

特に、外壁にひびが入っている場合や、基礎部分の防水処理が不十分な場合、水分が内部に侵入しやすくなります。
これにより、内部の湿度が上昇し、カビの発生が促進されます。

6.土壁のカビを防ぐための対策

土壁のカビ取りを行っても、カビが生育しやすい環境が継続されると、再び発生する恐れがあります。
そうならないようにするためにも、しっかりとカビ対策を行いましょう。

6-1.こまめに換気する

換気が不十分で湿気が停滞すると、カビの原因となります。
こまめに窓やふすまを開けて換気し、湿度の低い新鮮な外気を取り入れ、湿度が高く汚れた室内の空気を外に放出しましょう。

また、物が多い場合にも空気が停滞しカビの原因となります。
不要なものは処分して、部屋の中に空気の通り道を作るようにしましょう。

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6-2.除湿機やサーキュレーターを使う

雨の日など換気ができない時や、換気しても湿度が高い時にはエアコンのドライモードや除湿機を活用しましょう。
除湿機は湿気を効率的に取り除き、カビの発生を防ぐのに役立ちます。
さらにサーキュレーターを使って空気を循環させることで、湿気が一箇所に滞留するのを防ぐことができます。

また、家具は壁にくっつけずに設置することで風の通り道ができ、湿気が滞留しにくくなります。
目安としては、大体5センチほど離して設置しましょう。

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6-3.土壁を塗り替える

カビが繰り返し発生する場合には、土壁の塗り替えを検討することも有効です。
古い土壁を剥がし、新たに防カビ性能のある土壁を塗り替えることで、カビの再発を防ぎやすくなります。

また、長押があることで、長押と土壁の隙間に湿気やホコリが溜まりやすくなるため、隙間を埋めるのも有効です。

6-4.畳のカビ対策も行う

土壁にカビが発生する原因は、畳の湿気による場合もあります。
土壁だけでなく畳のカビと湿気対策も併せて行うことで、土壁のカビを防ぐことができます。

例えば、畳の上に大きな家具を置いていたり、布団やベッドを直置きしていると、湿気が発生しカビの原因となります。
そこから土壁にカビが広がることもあるので注意が必要です。

軽度のカビであれば、消毒用エタノールでの除菌や乾燥させることで解決できる場合もありますが、簡単にカビが落とせない場合には、畳を新しくすることも検討しましょう。

■関連記事■新築の畳はカビやすいって本当!?畳の青カビを簡単に除去する方法と再発予防策を解説

6-5.ホコリをこまめに除去する

土壁にホコリが蓄積すると、これがカビの栄養源となります。

土壁は凹凸していてホコリやゴミが蓄積しやすいため、ハタキ等を使って定期的にホコリを取り除くことが重要です。
特に湿度が高い季節には、ホコリが湿気を吸収しカビの原因となりやすいため注意しましょう。

また、空気清浄機を活用して、空気中のホコリやカビの胞子を除去するのも効果的です。
これにより、室内の空気を清潔に保ち、カビの発生を予防することができます。

7.まとめ

今回は、土壁に発生したカビを除去する方法や対策について解説しました。

土壁のカビ取りは難易度が高く、変色や傷みの原因となるため、基本的にはカビ取り専門業者に依頼することをおススメします。
酷いカビにお困りの方、自力でカビ取りしたけど再発してしまった方など、まずは一度ご相談ください。

業者が来るまでの間は、部屋を除湿したり、周りの物の移動や処分などを行って、これ以上カビが広がらないようにしましょう。
そして応急処置をする場合は「消毒用エタノール」を使用することをお勧めします。

また、今後土壁にカビが再発しないように予防する場合は、以下のカビ対策を行いましょう。

カビはただの汚れではなく、私たちの健康を脅かす恐れがある危険なものです。
しっかりとカビ対策を行い、万が一発生した際には迅速にカビ取りをして、健康で快適な住まいを目指してください。

<参考文献>

  • 高橋矩彦『簡単!住まいのDIYマニュアル壁塗り[珪藻土・漆喰]』2016年、中央精版
  • 鈴木昌子『壁塗り実例&実践百科』2014年、学研
  • 西方里見『最高の断熱・エコ住宅をつくる方法』2014年、エクスナレッジ