モルタル塗装のカビ対策

「モルタル塗装の床にカビが生えているようです。漂白剤を使うと色が変色しそうで怖いので、雑巾で拭き取っただけです。自力でとる方法はないでしょうか?」

モダンでスタイリッシュな雰囲気を演出してくれるモルタル塗装の床ですが、メンテナンスや室内環境によってカビが生えてしまうことがあります。そこで今回はモルタル塗装のカビ対策についてご紹介していきます。

1. モルタルに生えたカビの除去

1-1. カビの除去方法

モルタル塗装の床にカビが生えたら次の方法でカビを除去します。

~用意するもの~

  • マスク
  • ゴム手袋
  • 長袖長ズボンの衣類(皮膚を保護するため)
  • 消毒用エタノール、コンクリート用カビ取り剤
  • タオル
  • ブラシや歯ブラシ

~手順~

① マスク、ゴム手袋、長そで長ズボンを着用し身体を保護します。作業は部屋の換気をしながらおこないます。

② 消毒用エタノールを使用する場合はカビが生えている部分とその周辺に消毒用エタノールを噴射し、清潔なタオルで拭き取ります。

③ コンクリート用カビ取り剤を使用する場合は記載の使用方法に従い、カビ取りを行っていきます。

④ 細かい部分はブラシや歯ブラシで擦り落とします。

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1-2. 塩素系漂白剤は使っても大丈夫?

消毒用エタノールは手軽に殺菌ができる一方で、カビの色素まで除去することはできません。カビが軽度であったり、見た目は気にしないからカビの殺菌ができればいい、という方は消毒用エタノールでもいいでしょう。

カビの色素も落としたいときはカビキラーやハイターのような塩素系漂白剤を使用するという手もあります。ただし、塩素系漂白剤は強力な漂白効果がありますが、表面の塗装が剥がれたりモルタルを傷めるおそれがあります。また、相談者様が心配されているように変色の可能性も否定できません。

コンクリート用カビ取り剤の中には、主成分が塩素系漂白剤と同じ次亜塩素酸ナトリウムのものもあります。効果は高いですがモルタルの状態によっては傷みが増すこともあるので注意が必要です。

もし塩素系漂白剤を使ってカビ取りをする場合は、あくまでも応急処置として使用し、繰り返し使うことは控えた方がいいです。また目立たない場所で試してから作業に入りましょう。

変色のリスクを減らすため漂白剤の塗布時間は規定の時間を守り、塗布したまま長時間置しないように注意してください。

1-2. コンクリート用カビ取り剤を選ぶ際のポイント

コンクリート用カビ取り剤と一口に言っても市販されているものの種類も豊富で成分の表示もいろいろです。では、一体どれを選んだらよいのでしょうか。コンクリート専用カビ取り剤の主成分として、

  • 次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸塩)
  • 塩化ベンザルコニウム
  • 塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム

のいずれかである場合が多いです。塩化ベンザルコニウムや塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウムは名前が違うだけで成分としては同じものになります。

塩化ベンザルコニウムは逆性石けんのことで、安全性が比較的高くカビの殺菌・消毒に対しては効果を発揮してくれるものですが汚れの洗浄力は弱く、漂白効果はありません。

塩化ベンザルコニウムが主成分のカビ取り剤を使う場合は予め落とせる汚れは落としておく、もしくは強めにブラッシングや拭き取りをする必要があります。

また、塩化ベンザルコニウムをカビ取りで使う際には必ず水で薄めてから使うようにしましょう!

次亜塩素酸ナトリウムは、さきほどもお伝えしましたが塩素系漂白剤の主成分にもなっているものですので即効性があり塗布後放置するだけでカビの殺菌・消毒、そしてカビの色素の除去もおこなってくれます。これらをまとめると、

  • モルタルの変色・傷みはできる限り避けたい、黒ずみが残るのはしょうがない、安全性が最優先!という方は消毒用エタノールもしくは塩化ベンザルコニウム含有のカビ取り剤を使用する
  • 多少の傷みは仕方がない、それよりも早く確実にカビの除去をしたいという方は次亜塩素酸ナトリウム含有のカビ取り剤を使用する

と考えるといいでしょう。また、成分に関すること以外にも、床のカビ取りには屋内用のものを使う、スプレータイプが使いやすいといったこともカビ取り剤を選ぶ際のポイントになります。

■関連記事■逆性石けんはカビ取りに使える?

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プロレベルのカビ取りをするならカビ取りマイスターキット

カビ取り業者のハーツクリーンが開発したカビ取り剤のカビ取りマイスターキットは、実際に業者が使用している液剤を誰でも使えるように改良した商品です。

そのため自宅でプロレベルのカビ取りができますし、危険な成分は含まれていないためモルタルのカビ取りにも使用できます。

1-3. 自力でのカビ取りに自信がないときは

ご自身でカビ取りをすることに不安がある場合、カビが広がり過ぎて自力では対処が難しい場合には、カビ取り専門の業者に依頼するという手もあります。特にモルタルがひび割れしている、カビの状態が深刻といったときにはプロに任せた方が安心です。

場合によっては、除カビ後にモルタル塗装をし直して、キレイに整えるという方法を提案することもあります。モルタルの状態を見て適切な方法と薬剤でカビ除去をしてくれます。

2. モルタル塗装とは

ここまで、モルタルのカビ取りについてお伝えしてきましたが、そもそもモルタル塗装とはどのようなものかご存じでしょうか。

モルタルとはコンクリートやセメントと同様に使われる建築材料の一つで、セメント(石灰石や石膏を焼いて作った粉末)と砂と水を練り合わせたものです。

タイルやレンガの目地材に使われるだけでなく、外壁や床、室内の壁の仕上げ材としても使われます。モルタルに砂利が加わったものがコンクリートになります。

モルタルは原材料が砂とセメントといった粒子の細かいものからできているため室内の床や壁の仕上げ塗料として使うことで表面が滑らかでスタイリッシュかつモダンな雰囲気を作ってくれるのです。一方でモルタルはひび割れを起こしやすいというデメリットがあります。

これは湿気などの水分を含んだモルタルが乾燥する過程で収縮し、結果ひび割れを起こしてしまうことが原因です。実はこの水に弱くひび割れを起こしやすいというモルタルの特徴がカビの発生にも関係しているのです。

■関連記事■コンクリートのカビを除去する方法

3. モルタル塗装にカビが生える原因

モルタル塗装は、硬く無機質なその見た目からカビが生えにくそうに思えます。ではなぜモルタル塗装の床や壁にカビが生えてしまうのでしょうか。カビの原因には次のようなことが考えられます。

3-1. 表面塗料の劣化

モルタル塗装は、モルタルがむき出しになっているようにみえるものもありますがモルタル塗装のさらに表面にはクリア塗装(薄い透明な塗膜)が施されている場合がほとんどです。

透明なもの以外にもカラーのものや艶がでるものなどいろいろあります。この表面塗料には防塵、防水、ひび割れ防止などモルタルを保護する役割があり、中には防カビ効果のあるものもあります。しかし、経年劣化や摩擦により次第にこの塗装が剥がれていきます。塗装がなくなったモルタルは湿気やホコリ、汚れにさらされることになりカビが生えてしまいます。

3-2. 湿度が高い

モルタルは吸水性が高いです。そのため部屋の湿度が高かったり風通しが悪くじめじめしているとモルタルが部屋の湿気を吸い、カビが生えてしまいます。

さらに、吸収した湿気が乾燥する際にモルタルが収縮します。それがやがてモルタルのひび割れを引き起こし、カビの胞子がひびの間に入り込んでしまいカビ被害も大きくなります。

3-3. 日当たりが悪い

日光にはカビを殺菌する作用がありますがモルタル塗装された場所や部屋の日当たりが悪いとその効果が得られにくいです。特に北側の部屋は日当たりが悪くカビが生えやすいです。また、玄関をモルタル塗装にしている場合も日当たりの悪さと雨水などの水分やその他の汚れによって湿気を含みやすくカビが生えやすいです。

3-4. カビ発生個所の周辺環境の影響

部屋全体がモルタル塗装であっても、部屋の特定の箇所にだけカビが発生している場合はその周辺にカビの原因があると考えてよいでしょう。

例えば、大きな家具を置いていて掃除が行き届かずホコリや湿気がたまっている場所があり明らかにそこにだけカビが生えている、結露の影響を受けやすい窓付近にカビが多発しているなどです。元々のモルタル自体の吸湿性の高さに加え、ホコリなどのカビの栄養源となるものが加わることでカビの生育を加速させてしまいます。

4. 室内のモルタルのカビを防ぐには?

屋内のモルタルに生えるカビを防ぐには、

① カビの栄養源となるホコリや汚れはこまめに掃除する

② 一日の中で複数回部屋の換気をして湿気をためない

③ 表面塗料は定期的にメンテナンスをする

ことが大切です。湿気を含んだ状態のモルタルを放置するとカビが生えてしまうだけでなく、乾燥する際にはひび割れの原因になります。ですので、湿度が高くなりすぎないようにするだけでなく吸湿と乾燥の幅が大きくならないように気を付ける必要があります。
また、空気清浄機を活用し、空気中の埃やカビの胞子を吸い込むことで、カビの発生を抑制することができます。

そしてモルタルの仕上げ塗料は経年とともに劣化していくものです。塗料が剥がれるとモルタルがむき出しになり、劣化を早めカビも生えやすくなります。塗料の種類にもよりますが数年に一度は表面塗料の塗りなおしをしましょう。また、塗り直しをする前にカビをしっかりと除去してから行いましょう。

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5. まとめ

今回はモルタル塗装のカビ対策についてお伝えしてきましたが、まとめると

● モルタル塗装の床のカビとりには消毒用エタノール、コンクリート用カビ取り剤、塩素系漂白剤のいずれかを使用する。

● 自力でのカビ取りに限界を感じたらプロのカビ取り業者に依頼する方法もある。

● モルタル塗装は湿気を含みやすくカビが生えやすい建材であること、含んだ湿気が乾燥する際にモルタルが収縮しひび割れにつながるといった特徴がある。

● モルタル塗装のカビの原因として、モルタルが湿気を含み過ぎていること、部屋の掃除・乾燥が不十分であること、部屋の日当たりが悪いことが考えられる。

● モルタル塗装のカビを防ぐには、こまめに掃除と換気し、吸湿と乾燥の幅が大きくならないように心がける。数年に一度はモルタル塗装のメンテナンスをする。

となります。

モルタル塗装は使われる環境次第で寿命が大きく変わります。毎日の手入れと定期的なメンテナンスによってできるだけ良い状態を保っていきましょう。

<参考>

独立行政法人 製品評価技術基盤機構

會澤高圧コンクリート株式会社

斎藤 智 『室内環境の微生物に関わる最近の話題(3) 建物のコンクリート壁面におけるカビ汚染と対策』 一般社団法人 室内環境学会

高鳥浩介・久米田裕子 『カビのはなし ミクロな隣人のサイエンス』 朝倉書店

モルタル塗装のカビ対策