ナチュラルクリーニングの専門家に聞いた!靴の汚れとカビ対策
ジメジメとした梅雨の到来です。湿気が多い季節に気をつけたいのは、家中のカビ対策。特に家の顔となる「玄関」は、見えないカビが発生しやすい場所なので要注意です。
目次
1.玄関のカビの原因とは
「玄関で盲点となるのは、実は“靴のカビ”なんです」
と話すのは、家事研究家の佐光紀子さん。
知らず知らずのうちに靴にカビを増殖させてしまうことで、玄関全体をカビだらけにしている可能が高いと言います。重要なポイントは、カビを生やす前のお手入れ。いますぐ始められる靴のカビ対策について、佐光先生に教えていただきました。
1-1.靴の収納ケースにご注意
「最近、靴の収納にプラスチック製や紙製の靴ケースを使う方が増えています。大切にしたい気持ちは分かるのですが、それがカビを増やしている一番の要因です」
とのこと。おしゃれに靴を収納するためにケースを統一している人も結構いるのでは? そのこだわりが却ってカビを増殖しているとは、驚愕の事実です。
1-2.日本はカビ天国!?
「日本の気候は、高温多湿です。カビは、湿気が大好きなので、もともとカビが生えやすい環境にあります。履いたままの靴は、目には見えなくても汗や皮脂でいっぱい。それを箱に入れてしまえば、箱の中は湿気が充満してしまうことに。まさにそこは、カビたちのパラダイス(笑)。カビの温床になってしまいます」
かわいいデザインの靴ケースで、実際はカビを生やしていたなんて…!
「カビを寄せつけないためには、湿度を防ぎ換気を徹底することが大切です。とはいえ、1度だけ履いただけの靴をどうしたらいいのでしょうか?
まずは陰干しで湿気をとってからしまうこと。また、カビが生えてしまったらどうしたらよいかとよく聞かれるのですが、そこはナチュラルクリーニングの出番です」
2.靴の汚れとカビ対策
2-1.酸性の汚れには、アルカリ性の洗剤
「家の中の多くの汚れは、酸性とアルカリ性に分かれます」と佐光先生。
酸性の汚れは
- 油汚れ
- 油を含んだホコリ
- 手足のあか
- 皮脂汚れ
- 湯あか
- 嘔吐物
- 体臭
- 足のニオイ など。
一方、アルカリ性の汚れは
- 水あか
- 石けんかす
- 尿のニオイ
- ヤニやたばこ
などが含まれます。
「これらの汚れをみても家の中の大半は、酸性の汚れだということが分かりますね。ナチュラルクリーニングは、酸性の汚れをアルカリ性の洗剤を使って落とす。つまり、“中和”させることからはじめます」
酸性とアルカリ性で中和させるなんて、化学の実験のようで懐かしいですね。お掃除も実験のように楽しみながら行うのも清潔を保つポイントです。
2-2.靴に使える安心な洗剤とは?
「ナチュラルクリーニングで登場するエコ洗剤は、大きく分けて4つ。重曹、セスキ、過炭酸ナトリウム、クエン酸です。
レック 激落ちくんの重曹
出典:Amazon
レック 激落ちくん セスキ炭酸ソーダ
出典: Amazon
シャボン玉石けん 酸素系漂白剤
出典: Amazon
レック クエン酸の激落ちくん
出典:Amazon
簡単に説明すると、重曹とセスキは、アルカリ性洗剤の中でも親戚みたいな間柄。違いは、重曹は研磨力が高く、セスキには研磨力がないところ。過炭酸ナトリウムもアルカリ性洗剤ですが、漂白力と殺菌効果に優れているのが特徴です。唯一、クエン酸は酸性の洗剤になります。先ほどの例でも、靴の汚れは汗や皮脂といった酸性なので、基本的にはアルカリ性の重曹がおすすめです」
2-3.靴のカビなら「重曹」にお任せ
しばらく履いていない革靴のヒールにうっすらと青カビが生えていることってありませんか? そのような悲惨な状況でも、佐光先生は
「重曹さえあれば、慌てなくても大丈夫!」
と、太鼓判! 実際に革靴を使って重曹での落とし方を見せていただきました。
2-4.ヒールのカビ落とし
「重曹には、油汚れを中和すると同時に、プラスチックなどに傷をつけずに汚れを落とす研磨のパワーがあります。大切な革靴のヒールに青カビが生えたときにも、古布に重曹をつけてこするだけです。ヒール部分は、樹脂製なので重曹の研磨力で落とせます。力を加えずに、さっとひと拭きで簡単に取り除くことができます」
革のヒール部分についたカビは、
古布に重曹をつけて、クルクルと円を描くようにこするだけ!
ただし、アルカリの重曹で革をこすった後は、靴用クリームで油分を補うことをおすすめします。
佐光先生曰く、カビがつく前の靴のお手入れは、手に重曹をつけてこするだけでも十分だとか。誰にでも手軽にできるのが嬉しいですね。
こんな風に指先に重曹をつけて
軽くこするだけで小さな汚れはあっという間です
(直接、手で触れたくない方は軍手など手袋を軽くぬらして重曹がつきやすい状態にして同様に行ってください)。
3.靴のお手入れは素材で見極める
「靴のお手入れは、大きさやカタチではなくて、“素材”で異なります。次に、一般的な素材の違いで、ナチュラルクリーニングの仕方を簡単にまとめていきますね」
3-1.布素材
スニーカーや上履きなどの布靴が黒ずんだ場合は、石けんと過炭酸ナトリウムで落とします。石けんは皮脂汚れを落とすのに効果があり、過炭酸ナトリウムは、漂白と殺菌作用があるため、黒ずみを白くしてくれます。最後にクエン酸を溶かした水につけて、石けんと過炭酸ナトリウムのアルカリ分をすっきり落とします。クエン酸を使うことでリンス効果が期待できます。
必要な道具
石けん/洗濯桶/お湯(30~50℃)
過炭酸ナトリウム/歯ブラシ/バケツ/クエン酸
布靴の黒ずみ落とし方法
1.歯ブラシに石けんをつけて布靴の黒ずみをこする。
2.洗濯桶にお湯を入れ、過炭酸ナトリウムを加えてよく溶かす。
※お湯1リットルに対して過炭酸ナトリウム小さじ1弱が目安です。
3.汚れた部分が完全につかるよう、②に①を入れる(スニーカーの紐は外して一緒につけるとよい)。
4.2~6時間、そのままつけ置きする。
5.バケツに水を入れ、クエン酸を溶かしたものに布靴を1度くぐらせてから乾かす。
※水1リットルに対してクエン酸小さじ2が目安です。
3-2.ビニール素材
長靴やビーチサンダルなどは、ビニール素材です。このように大きさが違う靴でも素材が同じビニール製なので、落とし方は一緒。一度、覚えてしまえば簡単なので、ぜひ試してみてください。
必要な道具
洗濯桶/お湯/過炭酸ナトリウム/歯ブラシ/バケツ/クエン酸
ビニール製の長靴などの汚れ落とし方法
- 洗濯桶に30~50℃のお湯を入れ、過炭酸ナトリウムを加えてよく溶かす。
※お湯1リットルに対して過炭酸ナトリウム小さじ1弱が目安です。
2.靴が完全に沈むように①に入れる。
3.2~6時間つけ置きする。
4.バケツに水を入れ、クエン酸を溶かしたものに靴を1度くぐらせてから乾かす。
※水1リットルに対してクエン酸小さじ2が目安です。
★過炭酸ナトリウムの性質
ナチュラルクリーニングをさらにラクにしてくれるのが、この過炭酸ナトリウム。弱アルカリ性の洗剤で、酸素系漂白剤や過炭酸ソーダとも呼ばれています。色柄物にも使える漂白剤ですが、それ以上の優れもの。酸素の力で漂白のみならず、除菌や消臭、カビ対策にも。40~50℃のお湯に溶かして使います。重曹同様に、ホームセンターや100円ショップでも購入可能。
他の素材としてスエード靴は、扱いが難しいためプロにお任せする方が安心です。小さな汚れでも、時間が経てばカビの要因になります。片付けるタイミングで、しっかりと汚れを落とし、湿気をこもらせないこともポイント。キレイを保つことがカビを生えさせないコツです。
4.子どもの靴下を再利用しよう!
ドイツでは、同じ靴を二日続けて履かないそうです。一日、汗を吸った靴は地下の乾いたところで乾燥させて、休ませるとか。それくらい靴の湿気対策を徹底しているのです。
日本は?といえば、ドイツとは比べものにならないほど湿気が多いのに、同じ靴をずーっと履いていませんか(笑)。それでは湿気を防ぐことが難しいのは当たり前ですよね。そこで、提案したいのは子ども用のいらなくなった靴下で作る重曹入りシューキーパーです! 実際に作ってお見せしますね。
古くなった子ども用の靴下は靴の湿気対策に使えます。
必要な道具
子ども用の靴下/重曹/エッセンシャルオイル
重曹入りシューキーパーの作り方
1.靴下のくるぶしあたりまで重曹を入れる。
2.エッセンシャルオイルを数滴たらす。ユーカリやミントなどは殺菌効果があっておすすめです。
3.重曹がこぼれないように足首のところを結びます。
このように1足ずつ靴のつま先に重曹入りシューキーパーを入れれば完成!
消臭とカビ防止に役立ちます。
エッセンシャルオイルの香りがふわりと漂って、靴棚の嫌な臭い対策にも!
殺菌効果に加えて、気持ちもさわやかになります。好みのエッセンシャルオイルでお試しくださいね。
5.革製品の丁寧なお手入れ
冒頭で、革靴の日々のお手入れとカビ取りの方法はお伝えしましたが、ここではプラスαのお手入れ方法をご紹介します。用意するのは
椿油やオリーブオイルなどの植物性の油と、お酢と古布。油とお酢をブレンドしたもので靴をコーティングします。革製品のカビ防止対策におすすめだそうです。
今回は、酢と椿油を使いました
お酢と椿油の割合は、1:1
よく混ぜ合わせてから、古布にちょこんとつけます。
革素材のところに塗るだけでコーティングできます。
5-1.まだまだ使える「酢+油」
革靴のコーティングだけで捨ててしまうのは、勿体ない! ということで、椿油とお酢のブレンドを使ったメンテナンス方法まで、教えていただきました。靴以外の革製のカバンや革のコートなども同じようにコーティングすることが可能とのこと。衣替えの季節などにも活用したい方法です。
革のカバンも靴と同様に、軽く塗っていく。
革本来の輝きを取り戻し、ツヤツヤに。
しかも、目には見えない汚れまでとれて一石二鳥!
木製の家具を磨くときにもつかえるとか。
アンティークの家具もこのメンテナンスでさらに長く愛用できますね。
<注意点>
お酢は、ポン酢、すし酢などの調味酢ではなく米酢や穀物酢で。汚れをとったあとは、ベタつきが残らないように十分からぶきしましょう。素材によっては脱色・変色の可能性も。必ず事前に目立たない所で、シミにならないことを確認してから試してください。ラベルをよく確認し、不明な場合には専門店でクリーニングしてもらうことをおすすめします。
まとめ
・玄関のカビは靴のカビ対策からはじめましょう。
・靴の汚れは酸性の汚れなので、アルカリ性の重曹が最適です。
・重曹を使ったシューキーパーで手軽にカビ予防をしましょう。
・革製品のカビ対策は、お酢と椿油でお手入れしても◎
今回は靴のカビ取り対策から、家具のメンテナンスまでナチュラルクリーニングの神髄を教えていただきました。ナチュラルクリーニングは簡単なのに、すぐに効果が分かるのもいいところ。しかも、環境にも優しいなんて、お掃除するのが楽しくなりそうです。
佐光紀子 Noriko Sakoh
翻訳家、家事研究家。繊維メーカーや証券会社で翻訳や調査に関わったあと、フリーの翻訳者に。地球にやさしい暮らし方の翻訳をきっかけに、重曹や酢などの自然素材を使った家事に目覚め、研究を始める。2002年に出版した『キッチンの材料でおそうじするナチュラルクリーニング』(ブロンズ新社)がベストセラーとなる。以来、日本でのナチュラルクリーニングを定着させ、第一人者として活躍。掃除講座や執筆活動など幅広く展開中。2016年、上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士前期課程修了。
『〝つけ置きでやめ家事″がキーワード ナチュラルクリーニングの最強レシピ』(扶桑社)
『家事は8割捨てていい』(宝島社)など著書多数。
“つけ置きでやめ家事”がキーワード ナチュラルクリーニングの最強レシピ/佐光紀子著/扶桑社刊
(ライター 川越光笑)
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