リフォーム前にやるべきカビ対策とは?
【質問】
住んで20年する家の老朽化が進んできたので、リフォームやリノベーションを考えています。
水回りと北側の部屋で、カビが気になる場所もあるので、ついでにカビ取り工事もしたいのですが
リフォームをする前と後、どちらが良いのでしょうか。また、やっておくべき準備なども知りたいです。
カビ被害とリフォームやリノベーションは密接に関わっています。
なぜなら、カビ取り施工の際に、高確率で壁紙の交換。フローリングの貼替が発生するからです。表面のカビだけ除去できれば良いのですが、壁紙に関しては知らないうちに内側までカビで汚染されてることがあります。
カビ取りだけやろうと思っても、想像以上に費用がかかってしまうのです。
また、内装が経年劣化したから、これからリフォームやリノベーションをしようという方もたくさんいることでしょう。内装が劣化しているということは
キッチンやお風呂などの設備を取り換えたり、フローリングや壁紙を交換する工事をされるかと思います。
では、リフォームをするときにカビのことを気にされたことはありますか?
壁紙にカビが生えていても、新しい壁紙に変えるから心配ないだろうと思っていませんか?実は、リフォームの時こそ、カビ対策をすべきタイミングなのです。
リフォーム工事をする際に、カビを見落としていると、せっかくきれいな内装になっても
思いもよらないところからカビが出てくるなんてこともあります。
では、リフォームやリノベーションを始める前にどんなことに気を付ければいいのでしょうか?
目次
リノベーションする前にするべきカビ対策
1-1.壁紙を貼り換える工事をする時
リフォーム工事の中でもそこそこ多い工事になります。
費用もそこまでかからず手軽にできますよね。
壁紙の貼り換える場合は、まず既存のものを剥す作業からスタートします。
その際に石膏ボード部分にカビが発生していないかどうかを確認しましょう。
カビは普段から空気中に漂っています。
そもそもカビの細胞1つ1つは目視できないものなのですが、そのカビが目視できるような状態になるということはつまりカビがコロニー(集合体)を形成している=すなわち大量に発生しているということなのです。
この段階までになると、早めに手を打たないと、菌糸が壁の中に入りこみ石膏ボード部分にも被害をもたらしてしまいます。
石膏ボードまで被害が進んでいる場合は、すぐに新しい壁紙を張ってしまうのではなく
石膏ボードの除カビを行ったうえで壁紙を張るようにしましょう。
1-2.フローリングを張り換える場合
窓際や日当たりの悪い箇所のフローリングがカビで黒くなってしまうケースはよく起こります。
フローリングがカビてしまうと、壁紙を張り換えるように容易にはできません。
フローリングは、貼り換えの手間や廃材の処理なども必要ですので、貼り換えるにはそこそこの金額が必要です。
一部分だけ交換するにも、他の床の色と異なってしまいますし、どこまでカビの被害が出ているかが分からない為、広い範囲を交換しなくてはなりません。
カビの上からの重ね張りはNG
そして、注意しなくてはいけないのは「カビているの上からフローリングの重ね張りをしてはいけない」ということです。重ねて張ることを増し張りと言います。
フローリングの解体費用は節約できますが、しばらくしたら上に重ねたフローリングにカビが浸食してしまったという事例は多くあります。
またフローリングを増し張りすると、建具や巾木と干渉してしまいますので、できるだけ、張り替えをされることをおススメします。
1-3.設備を交換する場合
キッチンやお風呂、トイレなどを交換する場合です。
ここで怖いのが、漏水から起こるカビ被害です。
過去のお客様の事例では、上階のお部屋で設備交換をした際に、もともとあった排水管が劣化していたため、ジョイント部分から水がもれてしまったらしく、下階にも影響がありました。下階の方の押入の上部には湿気によるシミができ、そこからカビが大量発生したそうです。
また、そのカビを放置した結果、肺の病気にかかったことがきっかけで、カビ取りの依頼をされました。
なぜ漏水が起こったかといいますと、床下と通っている給排水管が劣化していたからです。
一般的に2000年築以前のマンションでは給排水管に鉄管を使用していることがあります。
そのまま使用し続けると、錆による劣化が進み水の流れが悪くなります。
そして、新しい設備をいれると、配管を流れる水流の速度が違う為、ジョイント部分で漏水が起こる可能性があるのです。
現在は、ポリエチレン製の配管が使用されていますが、以前はそうではありませんでした。
築年数的に不安がある場合は、設備を交換する際に、床下の給排水管の交換工事も一緒にすると将来的にも安心です。
1-4.スケルトンリノベーションをする場合
スケルトンは、内装や設備をすべて解体し、コンクリートのハコの状態にしてから、位置から間取りを作っていく工事のこと言います。
それに併せてインフラ(給排水管・ガス管)も刷新できるので上記で述べた、漏水被害を防ぐことができます。
全部解体するので「カビが生えていた壁や床材なども破棄するから、特にカビ対策をしなくても問題ないだろう」と思う方も多いかと思います。
しかし、カビはコンクリートにまでも生えてしまうのです。
例えば、既にお部屋がカビてた場合、その汚染の状況次第では、壁紙から石膏ボード、石膏ボードからコンクリートへカビが移ってしまうこともあります。
そして、コンクリートにカビが生えているのをそのままにして、工事を進めて行き、
きれいなリノベーションのお部屋が完成しても、将来的に、内側からカビが進行して壁紙にまで到達してしまうのです。
まとめ
ここまでの内容に共通しているのは、
リフォームやリノベーションで、表面にきれいな内装材で施工していても、
カビの根本をたたかないと、内側から浸食してくるということです。
せっかく費用をかけて、リフォームやリノベーションを施して表面上は綺麗になっても、カビが残った状態で工事を行うと、カビ臭さやカビ再発の原因となり、何度もカビ取りをすることになってしまいます。
その為にも、リフォーム前にしっかりとカビを除去することが大切です。
カビは我々にとっては、「予想外の被害・予想外の出費が必要」という印象が強いと思います。ですが、カビ自体は微生物なので、目視できないだけで空気中にいるものなのです。
被害が目に見えて明らかになってから対策をするというのは、まだまだカビ対策の優先順位が低いことに原因があるのではないでしょうか。
内側にあるカビを除去するには、それなりに解体費や除去費用も必要になります。しかし、日本は高温多湿でカビが発生しやすい気候ですので、カビが生えること前提で先手の対策をしていかなくてはいけません。
そのまま放置し、カビ被害によって健康被害を受けて取り返しのつかないことになる前に、早めの対策をしましょう。
<参考文献>
・松本忠男『カビ・ホコリ・菌を撃退!家の「正しい」掃除ワザ』2019年、宝島社
・吉川翠、芦沢達、山田雅士『住まいQ&A ダニ・カビ・結露』井上書院