【Q&A】洋服に生えたカビはお酢で除去できる?
久しぶりに着てみようと思った服にカビが生えているのを見つけたらどうしますか?
「カビ取りには酢が有効」という話を聞いたことがある方も多いと思います。そのため、洗濯の際に酢を一緒に入れたり酢水に服を浸け置きしたりされたことがある方もいるのではないでしょうか。
自宅にある酢を使って服に生えたカビが取り除けたら手間もお金もかからなくていいですよね。酸の力でカビをしっかり落としてくれそうな感じもします。巷で言われている通り、わざわざ漂白剤を使用しなくてもカビの程度によってはご家庭にある酢で除去できる場合もあります。
しかしそこには落とし穴が存在し、服のカビ取りに酢を使うことが逆効果になってしまうこともあります。そこで今回は酢で服のカビを落とすことのマイナス面とそれもふまえた酢を利用したカビ取り方法をご紹介していきます。
カビ取りにおける酢のマイナス面をお伝えする前に、酢にはどんな効果があるのかみていきましょう。
目次
お酢の効果
酢の効果その1) 浸透・剥離作用
服の繊維に染み込んで汚れをとかし、剥がしてくれる効果があります。
酢の効果その2) 消臭効果
酢を使うと酸っぱい臭いがつくのでは?と思われるかもしれません。しかし、酢の酸っぱい香りの元になる酢酸は揮発性で時間とともに酸っぱい臭いは消えます。そして、アンモニアやタバコのようなアルカリ性の臭いを消してくれる効果があります。
酢の効果その3) 抗菌作用
酢に含まれる酢酸が菌の細胞膜内に入り込み、雑菌の繁殖を抑制する効果があります。
このように、酢にはさまざまな効果があり他にも防腐効果によって食品の保存性を高める役割もあります。酸性の成分は菌の繁殖を抑えてくれる、という認識が酢で服のカビも除去できるという認識につながっているのかもしれません。
ここで同じ酸性の性質を持つクエン酸との違いについても触れておきたいと思います。
お酢とクエン酸の違い
クエン酸は柑橘系の果物に含まれる成分で、疲労回復などの効果があり健康食品にも取り入れられる成分です。それだけでなくシンクなどの水回りの水垢や、トイレの消臭、洗濯槽の汚れなどお掃除アイテムとしても効果を発揮します。
二つの違いは、クエン酸の酸は柑橘類に由来するのに対し、酢の酸は酢酸です。お酢特有のツーンとした香りは酢酸によるもので、クエン酸に酢酸の成分はありませんので、香りがありません。掃除やカビ取りにおいてクエン酸と酢酸の効果としては同程度ではありますが、クエン酸は揮発性がなく無臭であること、酢酸は揮発性があり臭いがあることが大きな違いになります。
そのため、拭き取ったり丸洗いできないようなもののカビとりにクエン酸は使わない方がいいでしょう。今回のように服のカビに関しては、酢とクエン酸であればクエン酸の使用をおすすめします。
レック クエン酸の激落ちくん
出典:Amazon
クエン酸はそれ自体に消臭・殺菌効果がありますが酢の中の酢酸の割合は4~5%程度です。そのため、クエン酸に比べて使用量が増えてしまいますし、その分酢に含まれる他の成分も服についてしまいカビの栄養分を増やしてしまう可能性があります。
クエン酸で除去できるカビが酢でも取れるとは限りませんし、逆も同様です。同じ酸性ですが使えるのに向いている物や場所は少しずつ異なりますので注意が必要です。
ここまで読んで、なんとなく酢で服のカビを落とすことがよくないような気がしてきたのではないでしょうか。冒頭でもお伝えしたように、酢で服のカビを取ることにはマイナス面もあります。酢を使って服のカビ取りをする場合の注意点には次のようなことがあります。
洋服のカビ取りをお酢で行うことのデメリット
酢がカビの栄養源になってしまう
先ほどのクエン酸との違いのところでもお伝えしましたが酢はカビ取りに有効な場合もある反面、使用量が多かったりすすぎ残しがあったりするとカビの栄養分になってしまいます。そうするとカビを除去するどころかカビが生える原因になってしまいます。酢の主成分は酢酸ですが、わずかにクエン酸も含まれていますし、うまみ成分のアミノ酸も入っています。それらもカビのエサになってしまい、一時的にカビを除去することはできても後々、カビが再発する可能性があります。
黒カビなど色素のついたカビは取れない
服に生えたカビが白カビのような軽度のカビの場合は酢で除去することも可能ですが、黒カビなどの色素までは落とすことはできません。黒カビがまだ小さく範囲も狭かったとしてもそのカビを酢で取り除くことはできないのです。
以上のように酢にはカビの繁殖を抑えてくれる効果や消臭効果がある一方で、カビ取りに使用した酢が逆にカビの栄養分になってしまったり、軽度のカビしか取ることができないというマイナス面があります。酢で除去できるカビには限界がありますので、服のカビを取りたいと思ったらまずは消毒用エタノールや酸素系漂白剤を優先的に使用することをおすすめします。
酢でのカビ取りはあくまでも一時的なものと考えて、服のカビ取り=酢、という認識にはならないようにしましょう。それでも、今手元に消毒用エタノールも漂白剤もない、とりあえず応急処置として服のカビが取れるなら酢を使いたいという場合は以下の方法でカビ取りをおこなってください。
用意するもの
- 衣類用ブラシ
- 穀物酢
- スプレーボトル
~手順~
- 衣類用ブラシで服についた汚れを落とします。
- スプレーボトルに酢と水を1:2の割合で入れ酢水を作ります。
- 酢水を服のカビが生えている部分に噴射してカビを除去します。
- 通常通り洗濯します。
※③の後、そのまま乾かしてもよいですが服の繊維に酢が残ってしまうことがあるのでできれば洗濯機にかけるようにしましょう。
その後、直射日光に当てて乾かします。
酢を使って服のカビ取りをする際にいくつか注意点があります。最も注意すべきことは使用する酢の種類です。カビ取りに使用するお酢には砂糖の入っていない穀物酢を使います。
一般的な家庭料理でも使用される酢です。黒酢やりんご酢、すし酢などは砂糖が入っていますのでそれらを使ってしまうとカビを取るどころかカビの栄養分を増やしてしまいます。
また、酢の濃度が濃い、乾燥が不十分であったりすると臭いが残ってしまったり、湿気により逆にカビが生える原因になりますので気をつけましょう。もしスプレーボトルがなければ適当な容器に酢水を作り、布に含ませて服をトントンと軽くたたくようにカビを落とす方法もあります。その場合カビ取りは局所的になり、服全体の消臭や他の部分に付着した目に見えないカビ胞子の殺菌まではできませんので注意してください。
服の白カビが広範囲に広がっている、黒カビが生えているなどの場合は酢でのカビ取りは諦めて消毒用エタノールや酸素系漂白剤を使用するようにしてください。
あくまでも酢でのカビ取りは一時的なものであり、積極的に使用するものではないということを覚えておきましょう。
まとめ
今回は服に生えたカビは酢で除去できるのか、ということについてお伝えしてきましたがまとめますと
●軽度の白カビであれば酢で除去することはできる
●酢がカビの栄養分となり、カビを増やしてしまう可能性がある
●酢で服のカビはある程度除去できるがあくまでも応急処置として使い、常用しない
●服にカビが生えたら消毒用エタノールや漂白剤を優先的に使用する
一般に浸透しているお掃除方法やカビ取り方法にも意外な落とし穴があることがお分かりいただけたかと思います。大切なお洋服を長くきれいに着続けるために日頃からカビ予防を心掛けるとともに、カビが生えてしまったときは適切なカビ取り剤を使ってカビ取りするようにしましょう。
出典
『菌・カビを知る・防ぐ60の知恵:プロ直伝!防菌・防カビの新常識』:日本防菌防黴学会