カビ取りか住み替えか悩んだときにチェックするべき項目
今のお住まいでカビ被害があったことはないでしょうか?
ざっと挙げるだけでも下記のような被害をもたらしてしまいます。
- 洋服やカバンへの被害
- 部屋に置いていた、タンスやソファへの被害
- 壁紙やフローリングなど内装への被害
- ペットや人体への被害
これらは、段階的なものではなくどれかの被害が起こり始めると、次々に拡大していくのです。
カビは胞子上で常に空気中に漂っています。
そもそもカビの細胞自体は微生物にあたる為、目視はできないものなのですが、目に見えて認識できるようになるということは、カビがコロニー(集合体)を形成するまでカビが増殖しているということになります。
初期段階で対策ができれば、長くそのお家に住み続けることができるのですが、
カビの状況によっては、対策をするより住み替えてしまったほうが良い場合もあります。
今回は、カビが生えてしまった場合に、いっそ住み替えた方が良いケースと、住み替えるメリットをご紹介していきます。
目次
1.住み替えるべきケース
1-1.地下で既に大規模なカビの被害にあっている
地下や半地下でカビの被害にあってしまうケースは、夏に多く発生します。
夏の地下空間は、どうしても結露が起きやすくなってしまいます。理由は、地下空間は空気が露点温度以下に冷やされてしまうからです。
東京の7月の露点温度は約20℃なのですが、建物下の土壌の温度は、18℃前後くらいにしかならない為、地下室周辺の地温は常に露点温度以下になり結露が起きやすい環境になってしまいます。
対策としては、断熱材を地下室の床・壁に50mm以上設け、除湿対策を行う必要があります。しかし、コスト面の負担が多きいことや、賃貸の場合にそこまで工事をするのかという疑問もありますよね。
また、半地下のお部屋は通常の相場よりも安くなります。
理由は日当たりや、カビへのリスクなど様々です。
過去に物件探しをされていたお客様で半地下のマンショの購入を検討された方がおられましたが、その理由は「日中はあまり家にいないから、日中に日当たりがなくても問題ない」とのことでした。しかし、カビのリスクという点では、日当たりが悪い部屋というのはそれだけカビが発生しやすく、またカビによる被害も起こりやすくなります。
また、地下や半地下の部屋は湿気が溜まりやすく、窓が少なく換気が充分にできないケースも多いことから、一度カビが発生してしまうとあっという間に広がってしまう可能性があります。
カビ取り施工で、地下室全面のカビ取りをもちろんすることも可能ですが、トータルでかかる費用なども考慮して、住み替えの検討してみるのも有りと言えます。
1-2.築古マンションで既にカビている
築古マンションの場合、カビ発生の原因は大きく3つ考えられます。
1-2-1.カビ対策をしない状態でリフォームをしてしまい、仕上げ材の内側にカビの原因がある
このケースは非常に多いです。
居住者の入れ替わるタイミングでリフォームをする際に壁紙の張り替えを行うことはよくあります。比較的安価で、内装がきれいになるため、あまりお金はかけられないけど、とりあえず壁紙を張り替えようというようなケースです。
しかし、壁紙を張り替える際に、石膏ボード下地のカビを見落としてしまい、その上から壁紙を張ってしまうと、しばらくして壁紙の裏側から黒いシミのようなカビが出てくることがあります。
同じように、カビの上から塗装仕上げをしても同じことになります。
1-2-2.給排水管や外壁防水の経年劣化から、漏水を起こしてしまいカビが発生している
マンションでは定期的に修繕工事を行うのが一般的です。
給排水管や外壁防水はその中でも重要な工事であり、その分費用もかかります。
マンションで区分所有者から毎月集める、修繕積立金というお金で修繕費用をまかなっているのです。
ただし、修繕積立金が上手く貯蓄できていないマンションもたくさんあります。
この場合、修繕工事を先送りしたり、できないマンションもあります。
過去の事例で、修繕積立金があまり溜まっていないマンションがありました。理由をみてみると、築年数が古くなっていることで直す箇所が増えすぎているようでした。
築古マンションがすべてそうなのかとおうと、そういうわけではなく、エントランスやエレベーター等を新しくして新築のマンションみたいに修繕できている場合もありますが、そのマンションは、たびたび各住戸のバルコニーからの漏水が相次ぎ、そこに費用をとられている様でした。漏水の原因になっていたのは、マンションの構造がひな壇になっていることでバルコニーが露出している面積が多く、雨風の影響を受けやすいということが理由だったのです。バルコニーや屋上防水に費用を充てるようにすれば良かったのですが、そこまで管理が上手くいかなかったのかもしれません。
こうなってしまっては、自分の力だけではどうにもできず、引っ越しを検討した方がいいレベルになるかもしれません。
1-2-3.窓サッシが古い為、結露が起きやすくなっている
窓サッシはマンションの場合、何千万円という費用がかかるかなり大がかりな工事です。その為、平均では築40年以上で、かつ修繕積立金が十分にないと、そこまでの交換工事ができません。
マンションの修繕工事の優先順位としては、防水工事や給排水管の更新工事、エレベーターのリニューアルが高く、各住戸の玄関扉や窓サッシは低めです。余裕があればやろうくらいの順位なのです。
また窓サッシは、共用部分に該当する為、基本的に自ら交換することができません。
よって、築年数の古いマンションになると古いままのサッシをそのまま使用する可能性が高いです。サッシの劣化状況によりますが、隙間風が入ってきたり、サッシ自体が古すぎる場合は、結露対策の為にサッシをもうひとつ内側につける工事をして二重の状態にすることをおススメします。
これらの3つは、自分でどうにかできる内容もありますが、コストがそこそこかかるものがありますし、それで根本的にカビ被害が解決するかは微妙なところです。
ここまでは、物や内装へのカビ被害ですが、人体に影響を与えるような被害が発生した場合は、早めにお住み替えをおすすめします。
1-3.カビが原因で病気になった場合
カビが原因で引きおこる病気は様々ですが、シックハウス症候群などが代表的な例です。シックハウス症候群とは、家の建材や化学物質、カビやダニなどが原因で健康に影響が出ることです。(厚生労働省:シックハウス症候群)実際、医師により「カビにより健康被害が出ているから引っ越しをするように」と、指示されるケースもあります。カビ被害で取り返しのつかない健康被害を受ける前に、空気のきれいな住まいに引っ越しをするのが安心です。
カビ対策も家全体にまで行わないといけない為、数百万円という費用が必要な場合もあります。過去のお客様でも「そこまで費用が必要ならこのタイミングで引っ越そうかな」という方もいらっしゃいます。
持ち家だったり、通勤や通学、また家の事情でそう簡単には引っ越せない場合もあるかと思います。その場合には、カビ取り業者に依頼し、しっかりとカビの原因を除去して再発させない環境をつくりましょう。
2.住み替えるメリット
住み替えをするにもお金が必要です。
賃貸では、数十万円単位の初期費用が必要ですし、
買い替えになると、不動産会社との売却と購入についてのやり取りが発生します。
引っ越しの準備などにも時間とお金を費やします。
では住み替えのメリットは何になるのでしょうか?
2-1.カビの生えにくいエリアや条件から物件探しができる
物件のあるエリアや、条件によってカビが生えにくい物件を探すことができます。
例えば、地盤は緩いところより、しっかりしている台地の方が良いですし、
土地の低いところより、高台に位置しているほうが良いです。
湿気は高いところから低いところへ降りてくる性質があるので、坂の下にあるような物件の周囲は湿気が溜まりやすいです。
また、条件に関しても北向きより、南向きの方が良いですし、階数も3階以上がおすすめです。
また、物件の管理状態や、構造によってもカビの生えにくい物件を選定することができます。
2-2.住む前に、カビの可能性がある内装材に除カビ・防カビができる
引っ越しの荷物を搬入する前にカビ対策ができるということがポイントです。
中古の物件の場合は一見きれいに見えても、壁紙やフローリングの隙間、窓サッシの隙間などにカビが残っていることがあります。
きれいかと思って引っ越した賃貸だが、フローリングの隙間や壁と床の隙間に汚れが残っていて、そこからカビが発生したなんてこともあります。
荷物を運び込む前に、気になる箇所の除カビ・防カビをしておくことでカビが生えにくい環境を整えておくとより安心できるのではないでしょうか。
2-4.一番大事な家族の健康を守れる
これが一番大事ですよね。
これまでお問い合わせを頂いた中にもカビによってアレルギーになったり、
ペットにもカビが原因で湿疹が出てしまったというお客様は多くおられました。
カビは段階によって、
- 自分で対策できるカビ↓
- カビ対策のプロに任せないといけないカビ↓
- リフォーム・リノベーションまでやらないと改善できないカビ↓
- 住み替えないといけない
というように時間とお金の必要度合いが変わってきます。
まとめ
家中にカビが生えてしまった場合、「住み替え」となるのは最終段階に思えますが、
将来のことや、現状のお家でカビ対策をしても再発の可能性が高いなどといった場合は、
思い切って住み替えを検討してみてもいいかもしれません。
<参考文献>
・松本忠男『カビ・ホコリ・菌を撃退!家の「正しい」掃除ワザ』2019年、宝島社
・吉川翠、芦沢達、山田雅士『住まいQ&A ダニ・カビ・結露』井上書院