住宅に発生するカビはどこからやってくるの?

家の中で放置したパンやジャム、お餅やお菓子などの食品類にカビが生えていたり、バスルームやトイレ、キッチンなどの壁や床、小物類から布団やタンス、押し入れ、クローゼットなど日常生活の中でこまめに掃除や除菌をしていてもいつの間にかカビが発生していることってありますよね。

住宅の中に発生するカビって、そもそもどこからやってくるのでしょうか?

今回はそんな疑問にお答えし、住宅にカビが発生する原因や対処法などをご紹介します。

1.住宅に発生するカビはどこからやってくる?

カビとは、動植物に寄生し、食べ物、衣類、生活用品などさまざまなものに繁殖する菌類のことです。

カビというのは俗称で、専門的にはカビのことを「真菌」と呼びます。

酵母やキノコも真菌の仲間ですが、発育の仕方や菌種で区別されています。

菌類は、地上、地中、水中、大気中など地球上の至るところに存在しており、動物の生体内や植物などにも多く寄生しているのです。

そんな自然界に多く存在しているカビの胞子が気流に乗って空気中を浮遊し、住宅内に侵入してくるのです。

また、カビの胞子は建築資材に付着していたり、家が建つ前から空気中にも存在しているのです。

カビは、環境条件が整うと、どんどん成長してかたまりとなりわたしたち人間に見える状態になります。

カビのかたまりを「コロニー」と呼び、コロニーとなったカビは繁殖の勢いを増し、カビの胞子を空気中に飛ばします。

飛んだカビの胞子は、カビが成長するのに適した場所に定着し、再び繁殖をくり返すのです。

そのため、目に見えないだけでカビはわたしたちの住宅の中などに存在しているのです。

住宅の中でカビが発生しやすい場所は、バスルーム、キッチン、トイレなど水周りや家具の裏側や押し入れ、下駄箱に多いですが、住宅内のどこでカビが発生しても不思議ではなく、カビが発生しない住宅というのはないのです。

2.カビの発育に必要なもの

カビの発育に必要なものは、酸素、②、温度、③湿度、④栄養分の4つです。

まず第一にカビは酸素がないところでは発育することができません。

わたしたち人間も酸素がないと生きることができませんので、

次に②温度ですが、カビの発育には人間が快適に過ごせる温度20℃~28℃程度が最も好まれます。

カビの種類によって多少違いはありますが、カビは5℃~35℃ぐらいが発育できる温度として考えられています。

次に③湿度(水分)ですが、カビが発育するためには湿度(水分)は欠かせません。

こちらもカビの種類によるのですが、一部乾燥した環境でも発育できるカビも存在します。

しかし、湿度(水分)が全くない場合には発育することができません。

カビの発育に必要な湿度は約60%以上と考えられています。

最後に④栄養分ですが、カビは主に有機物を栄養源とします。

例えば、ホコリ、皮脂、汗、アカ、フケ、食品のカスなどを栄養分とし、これらが多く存在する床や畳などでカビは発育します。

3.住宅の気密性の向上とカビ

現代の住宅では、鉄骨、コンクリートなどが用いられ、古くからある木造住宅と比べると吸湿性が弱くなっています。

また、気密性も高く保たれており、すきま風が入らず、エアコンなどの冷暖房機によって室内の温度と湿度は年間を通して一定に保たれており快適に過ごすことができます。

このような気密性の高い住宅では、バスルームなどから出る湯気や、調理の際に発生する水蒸気が逃げ場を失い、室内の湿度は高い状態となります。

さらに、冷暖房機によって室内と外の温度差が大きくなります。

そうすると、住宅の壁面に結露が発生します。

このように湿度が高くなると、畳や床、壁などにカビが発生しやすい条件がそろうことになるのです。

特に、高温多湿となる梅雨の時期から夏にかけては、カビにとって最も良いシーズンとなります。

住宅の気密性が上がったことにより、わたしたちの生活は快適になりましたが、カビが発生する原因にもなっているのです。

他にも、住宅の欠陥や施工ミス、老朽化による影響で室内の湿度が高くなることがあります。

例えば、雨水が吹き込んだだり、排水が室内に流入し、湿度が高くなることがあります。

4.住宅の環境によるカビ対策方法

住宅の湿度は立地条件や住宅の欠陥によっても高くなることがあります。

例えば、沼地や埋め立て地では、地面から水分が蒸発して室内にこもります。

また、海、川、湖などの水場の近くや山を切り崩した土地の周辺は湿度が高いことが多く、住宅にも湿度の影響があります。

このような環境に住宅があるときは、排気を心がけ、湿気を室内に取り入れない工夫が必要です。

このような環境でこれから家を建てることを検討している場合には、盛り土をして少しでも土台を高くしたり、床下に換気扇を使うなどの湿気対策をすることが大切です。

5.生活の工夫によるカビ対策方法その1

カビが発生する条件は、①酸素、②、温度、③湿度、④栄養分の4つがそろうことでしたね。

このどれかひとつでも対処することができれば、カビが発生しにくい環境にすることができます。

①酸素と②温度でカビ対策をするのは難しいので、③湿度と④栄養分の対策をすることでカビが繁殖するのを予防することができます。

ここではまず、③湿度を下げることに注目していきたいと思います。

カビは、室内の湿度が60%以下になると発育が困難になります。

人間が快適に過ごせる湿度は50%前後ですから、それ以上高くならないように湿度を調節することができればカビが発生するのを防ぐことができます。

住宅内の湿度が高くなる原因は、気象条件によるもの、立地条件によるもの、住宅の欠陥によるもの、生活によるものが考えられます。

日本の気象条件は地域によって多少の差はありますが、夏の高温多湿、冬に低温乾燥します。

そのため、室内に湿度計を設置し、夏は50%前後になるように心がけましょう。

晴れた日には窓を開けて室内の空気の入れ換えをしましょう。

雨が続いて窓が開けられない日は、除湿器を活用したり、エアコンのドライ運転がおすすめです。

調理や入浴をした際には、換気扇を回し、洗濯物の部屋干しや濡れたものをなるべく室内に持ち込まないようにしましょう。

押し入れやクローゼット、下駄箱などは閉めたままにせず、ときどき開放して空気の入れ換えをしましょう。

また、除湿剤やすのこを敷くことも有効です。

風通しの悪い部屋や場所は、扇風機やサーキュレーターを使用して空気を強制的に循環させ、湿気が滞留しないようにしましょう。

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6.比較的簡単にできる住宅のカビ対策予防法

住宅のカビ予防のポイントは乾燥と汚れを取り除くことです。

これまで述べてきたように、まず室内の湿度が上がりすぎないように気を付けることが大切です。

それと併せてこまめな掃除や除菌を心がけることでカビが発生するのを防ぐことができます。

理想的な掃除の頻度ですが、ホコリがたまりやすいリビングや汚れやすいキッチン、バスルームは毎日掃除するのが望ましいです。

そのほか、よく手で触れる場所や家具の裏側もカビが発生すやすいのでホコリを取り除き除菌するようにしましょう。

毎日掃除をするのは大変ですが、カビが発生してから対処するとどうしても大掃除になってしまうこともあるので普段からフローリングワイパーを使用してホコリを取り除いたり、消毒用エタノールや除菌シートなどでさっと拭くなど、簡単にで良いので掃除の習慣をつけるようにしてください。

また、空気清浄機を使用するだけでも空気中のホコリやカビの胞子を減らすことができるのでお勧めです。

7.カビとアレルギー

カビはさまざまなアレルギーの原因になります。カビの生えた住宅に住むことによってシックハウス症候群の原因になることもあります。

カビは、皮膚に接触するとアレルギー性皮膚炎を引き起こしたり、カビが生えた食品を食べるとアレルギー性胃腸炎などの原因にもなります。

また、目の粘膜にカビが付着するとアレルギー性結膜炎などを発生させたりするので住宅内でカビが発生しないように気を付け、カビが発生してしまった際にはなるべく早く対処し、対処する際にもカビに接触しないように注意が必要です。

8.カビ取り専門業者への依頼も検討しましょう。

住宅のカビの発生がひどいときには、カビ取り専門業者に原因や住宅内をよく調べてもらい、適切なカビ対策を施さないとカビの被害がどんどん広がってしまうおそれがあります。

カビは一度目に見える状態で発生すると、どんどん繁殖し広範囲に被害が拡大していきます。

カビによる被害が拡大する前に予防していくことが望ましいですが、カビによる被害が出てしまった際にはカビの知識や経験豊富なプロの力を借りてみる方法もあります。

また、これからご自宅を改築したり、新築したりする場合には、防カビ対策も検討するのがおすすめです。

結露の防止や空調設備の充実などの要望を業者に伝えたり、はじめから防カビ施工をしておけばカビが発生することを防ぐことができるだけでなく、カビが発生してからその都度対処するよりも経済的でもあります。

9.まとめ

・カビは空気中に漂っています。

・カビの発育には①酸素、②、温度、③湿度、④栄養分が必要です。

・住宅のカビ予防のポイントは乾燥とこまめな掃除です。

・毎日簡単にで良いのでホコリを取り除くことと除菌を心がけましょう。

・住宅のカビはカビ取り専門業者へ依頼も検討しましょう。

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<参考文献>

・松本忠男『カビ・ホコリ・菌を撃退!家の「正しい」掃除ワザ』2019年、宝島社

・吉川翠ほか『効果抜群!ダニ・カビ退治法』1994年、主婦と生活社