文化財・絵画に生えたカビを除去する方法

「大切な絵画にカビが!!傷つけないように除去するにはどうすれば良いの?!」

文化財や美術品など、貴重なものにカビが生えてしまうことがあります。そのままでは作品がどんどん傷んでしまい価値を大きく損ねてしまいますが、文化財や美術品のカビの除去には一般的なカビ除去の方法は使えません。そこで、どんなふうにカビ除去をするのかまとめました。

日本では文化財・絵画のカビの被害を受けやすい

カビが生えるには気温・湿度・栄養・酸素の4つの条件が揃うことが必要だといわれていますが、中でも重要になるのが湿度です。一般的に湿度が60%以上でカビが発生しますが、日本の気候は高温多湿であるため、カビが生えやすい環境にあります。その為、大切な絵画や文化財にもカビが生えやすくなるのです。

保管場所の湿度管理が問題

美術館や博物館内では湿度管理がきちんと行われているので問題ありませんが、収蔵庫などで湿度管理が不十分だと美術品にカビが発生してしまいます。一般家庭でも、温度差が生じやすく結露が発生しやすい居場所などで美術品を保管してしまうとカビ被害が生じます。

紙の作品だけでなく、木でできた彫刻や仏像、木造建築物なども黒斑や変色などのカビ被害を被ることがあります。また、絵画が額装されてガラスケースなどに入っていても、ガラスについたカビの胞子がガラス内部にまで潜り込んで、中の絵画にカビを発生させることもあります。

カビが生えると甚大な被害を及ぼすことも

カビが生えると、作品の表面に白い斑点ができてきます。そのままカビを放置すれば、胞子でどんどんカビが深く広くなってしまいます。

カビの程度がひどくなると、絵の具の中にもカビが入り込んで、作品の表面が乾燥して割れたり、鮮やかな色彩が失われたり、絵の具が剥がれ落ちたりすることもあります。このような状態になると文化財的・美術的な価値を大きく損ねてしまいますし、修復が困難になる危険性もあります。ですからカビを見つけたらできるだけ早く除去することと、カビが生えないように保管管理することが重要です。

絵画などの美術的、文化財は保管方法によっては内部でカビの胞子が広がる為、湿度管理と保管場所が重要

美術館・博物館でのカビ除去方法について

美術館・博物館では、カビの被害から作品を守るため専門的な対策を講じています。

燻蒸ガスによる方法

かつて美術館や博物館では、臭化メチルと酸化エチレンによる燻蒸剤でカビを除去する方法(ガス燻蒸)が一般的に行われていました。ただし、この方法は臭化メチルが人体に悪影響を及ぼす可能性があることと、オゾン層破壊の恐れがあることが分かったため世界的に使用が規制されるようになり、2005年からは全廃されて使用されなくなっています。

総合的有害生物管理(IPM)

ガス燻蒸が全廃された後は、総合的有害生物管理(IPM、Integrated Pest Management)という方法で美術品のカビを除去するようになっています。これは、カビや害虫といった有害な生物を、生物の生育環境に配慮しながら、さまざまな手法を用いてカビや害虫を一定レベルで管理しようという方法です。統一的な方法があるのではなく、個々の美術館や博物館の立地条件や気候条件などを踏まえた上で、カビの除去・予防の最適な方法を考えていくというやり方になります。

個人でのカビ除去方法について

美術館や博物館ではなく、個人宅で所有している美術品にカビが生えてしまった場合は、軽度の場合は自分でも除去できますが、高価な物などは修復の専門家に依頼するのがベストな方法です。

軽いカビなら自分で除去することも可能

ごく軽いカビであれば、自分で除去することも可能です。消毒用エタノールを乾いた布に含ませ、そっとカビを拭き取っていきます。ただし、美術品を損傷することがないよう、くれぐれも慎重に行って下さい。また、バスルームなど水回りに使用するカビ取りクリーナーは作品を傷めますから、絶対に使用しないで下さい。

ドーバー パストリーゼ77

出典:amazon

修復のプロがカビを除去

美術品として貴重な物は、自分でカビ除去をしないほうが無難です。美術品には修復の専門業者がいるので、任せたほうが安心です。油彩画、水彩画、版画といった作品そのものだけでなく、額縁に生えたカビ除去もしてくれます。美術品専門の燻蒸業者を探すこともできます。専門の薬剤で燻蒸してカビを殺菌した後、クリーニングして作品をきれいな状態に戻してくれます。

プロのカビ取り職人

カビを予防することが一番

家庭で美術品を所有する場合には、美術館や博物館以上に湿度の管理が難しくなります。カビがひどくなると、専門業者に依頼しても完全に除去することはできなくなってしまうので、カビが生えないようにうまく保管することが大事です。保管場所としては

  • 室温や湿度の変化を受けにくい場所
  • 蒸気や湯気が発生しない場所
  • 直射日光を受けない場所
  • 換気ができる場所

がベストです。

一般家庭の押入れは湿度がこもりやすいので避けた方が無難です。絵画を壁にかける場合は、絵画の裏面に湿気がこもらないように注意します。特に暖房をかける部屋の窓際には結露が生じるので注意しましょう。額縁に溜まったホコリもカビの温床になるので、こまめに掃除をしてホコリが溜まらないように気をつけることも大切です。

絵画や文化財のカビは予防することが大事。湿度の調整や換気ができる場所に保管して、こまめな掃除を!

タニタ 温湿度計

出典:amazon

まとめ

文化財・絵画など価値の高いものに生えてしまったカビを除去する場合は、一般的なカビ除去の方法が使えません。貴重な作品を傷めないためにも、文化財・絵画に詳しいカビの専門業者に依頼するほうが安心です。