カビ毒とは一体どんなもの?!カビ毒の種類は?!

 水周り、エアコン、壁、窓、冷蔵庫、食品、衣類など私たちの身の回りには数多くのカビが存在しています。

日本は気候の特性からカビが発生しやすく、そのおかげで味噌や醤油をはじめとする多くの発酵食品が生み出されました。世界でも類を見ないほど様々な発酵食品を利用している日本は、最も上手にカビを活用している国でもあります。また、ペニシリンなどの抗生物質や酵素製剤など医薬の発展に貢献してきたカビもいます。

しかしその一方で、私たち人間や動物に悪影響をもたらすカビ毒を生み出すカビも存在します。今回はカビ毒とは一体どんなものなのか、その種類をご紹介します。

カビ毒とは?

カビ毒とは、カビが増殖する過程で産生される代謝産物のうち、人や家畜の健康に影響を及ぼすものをいいます。

つまり、身の回りに存在するカビが気づかないうちに毒を持ち、その空気を吸い込んだりカビ毒を含んだ食品を食べたりした人や動物が健康を害してしまうのです。

パンにもカビがすぐ生えますよね。

カビ毒は“マイコトキシン”とも呼ばれ、現在は300種類以上のカビ毒が報告されています。カビ毒が体内に入るとアレルギー疾患や食中毒、など疾病の原因になることもあります。

カビは目に見えることがありますが、カビ毒は見た目には分からないので注意が必要なのです。

またカビ毒の特徴として、加熱に強いということがあります。食品についたカビを加熱処理してもカビ毒は消えないのです。また住宅のカビ取りに熱湯を使用してもカビは殺菌できたとしてもカビの産生したカビ毒は消えずに残っているのです。しかしカビ毒は目に見えないため、家の中や食べ物に生えたカビが毒を持っているかどうかを判断するのは難しいですよね。

ここからは私たちの身近に潜んでいる可能性の高いカビ毒についてご紹介していきます。

カビ毒の種類

 今回は以下のカビ毒についてお伝えします。

  • アフラトキシン
  • オクラトキシンA
  • デオキシレバニノール
  • パツリン

①アフラトキシン

コウジカビの一種であるアスペルギルス・フラバスが産生した毒を「アフラトキシン」といいます。アフラトキシンは強力な発がん性をもっており、肝臓障害への危険もあることから大変危険なカビ毒です。

農林水産省「いろいろなかび毒」参照

コウジカビ自体は絨毯や壁・畳・食品など家の中のいたるところで発生しますが、人に悪影響を与えるアフラトキシンに関しては食べ物に発生するケースが多いです。特に

  • ピーナッツ
  • とうもろこし
  • 穀類
  • 乾燥果実
  • 香辛料

などでアフラトキシンの汚染がみられます。

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 日本国内で検出されたアフラトキシンは全て輸入品であり、今のところ国内で作られた農作物からアフラトキシンは検出されていません。ですが、ご家庭での保存状態によってはカビが毒を作り出す可能性もゼロではありません。アフラトキシンは加熱にも強いため加熱調理をしても毒は残ります

カビ毒が作られているときには既にカビも広範囲に広がっていると考えられるため、カビが生えた食べ物は基本的に食べないようにしましょう。

②オクラトキシンA

 コウジカビと青カビの一部が産生した毒を「オクラトキシンA」といいます。オクラトキシンAも発がん性をもち、腎臓障害への危険があると報告されています。

カビそのものは青・黄緑・白・ピンクなど青緑に近い色をしています。家の中では絨毯・押し入れ・畳・壁・食品などに発生します。このオクラトキシンも室内空間での健康被害はほとんど確認されておらず、ごくまれに鼻炎などのアレルギー症状がでた事例もありますが、ほとんどが食品による汚染が中心です。特に麦をはじめとする穀類、コーヒー豆、カカオ、乾燥果実などから検出されています。

 北欧では、オクラトキシンによって汚染された飼料で飼育した豚の腎症が認められていることや、人の発症例としては、バルカン諸国でオクラトキシンが原因の腎臓病がしばしば発生しています。

③デオキシニバレノール

 赤カビの一部が産生するカビ毒を「デオキシニバレノール」といいます。赤カビ自体は住宅の水回りや壁などに発生しますが、住宅で発生した赤カビによるカビ毒の健康被害はなく、人に悪影響を与えるデオキシニバレノールについては小麦や大麦、トウモロコシに生えた赤カビからの汚染が確認されています。

デオキシニバレノールを体内に取り込むと食欲減退や嘔吐、胃腸炎など消化器系の症状がでるとされています。

日本では麦の生育途中でデオキシニバレノールに感染する例が多いですが、輸入された小麦からデオキシニバレノールが検出される例もあります。厳しく検査がされるため、私たちの食卓にデオキシニバレノール入りのパンが並ぶ、といった可能性はかなり低いですが、ご自宅での保管状況によっては赤カビが生え、そこからカビ毒を生む、ということもありますので注意が必要です。

例えカビの部分を取り除いても目に見えるカビがなくなっただけで胞子やカビ毒は残っていますので、古くなったパンやお米は食べないようにしましょう。

 ちなみに、お風呂場などに見られるピンク色のカビのようなものはカビではなく水垢で「ロドトルラ」という酵母菌の一種です。

毒性はありませんが、不衛生ですし黒カビの原因にもなります。見つけた際には取り除くようにしましょう。

④パツリン

 青カビの一部が産生した毒の中でもりんご果汁やりんごの加工品でみられるカビ毒が「パツリン」です。

りんごの傷んだ部分からカビが侵入し、パツリンが作られます。パツリンは湿度が高ければ低温でも作られるため、日本の気候条件でも十分に作られる可能性がありますパツリンはりんご及びその加工品、特にりんごジュースにみられます。これは、カビや虫食い、打撲などで生食用の商品にならないリンゴをジュースなどの加工品の原料としているためだと考えられます。

 今のところ人への健康被害はありませんが、マウスやニワトリなどの死亡例が報告されています。スーパーなどでリンゴを購入する際には傷んでいないか確認するようにし、自宅で保管する際も傷がつかないようにフルーツキャップなどつけておくとよいでしょう。

以上が主なカビ毒になりますが、ここで水回りやエアコンなどに生えやすい黒カビについても触れておきたいと思います。

黒カビの影響

黒カビは、カビ毒は出しませんがカビの胞子を吸い込むことによって一般的なアレルギー症状を引き起こします。咳やイガイガ、鼻水、目の痒みの他、アトピーや真菌症のリスクがあります。花粉症のように今日は問題なくても次の日に発症する、といった可能性があり、許容量を超えると悪さをするので注意が必要です。

ここまでカビ毒についてお伝えしてきましたがいくつか注意点があります。まず、必ずしもこの色・この食品に生えているカビだから、あのカビ毒をもっている、といったように簡単に結び付けられるものではありません。

あくまでも可能性であり、影響も個人差があります。また、カビ毒が発生している段階ではカビそのものもかなり広がっていると考えられるため、食品に関しては食べないのはもちろんのこと、室内のカビについてはカビがひどくなる前にカビ取りをするなど対処しましょう。

カビの生えた食べ物を一度にたくさん食べてしまいカビ毒の健康被害に合う、といったことはほとんどないと思いますが室内に生えたカビの胞子を毎日少しずつ取り込んでしまい体調不良を引き起こす可能性はありますので、日ごろからカビが生えないようカビ予防をすることが大切です。

まとめ

今回はカビ毒についてお伝えしてきましたが、まとめますと

●カビ毒は食中毒・アレルギー疾患・などを引き起こすことがある。

●主なカビ毒にはアフラトキシン・オクラトキシンA・デオキシニバレノール・パツリンがある。

●カビ毒は加熱に強いため、カビの生えた食べ物は食べない。

●日ごろからカビ対策をおこない、カビの発生・カビ毒の産生を防ぐ

 カビ毒は人の健康に悪影響を及ぼすものです。食品を通して体内に取り込むカビ毒はわずかであっても、住宅に潜むカビによって長い間気づかないうちにカビの胞子を身体の中に蓄積させている可能性があります。身体に表れていないからと油断せず、こまめなカビ予防を心がけましょう。

★出典

東京都福祉保健局 食品衛生の窓

農林水産省

一般財団法人 食品産業センター HACCP関連情報データベース

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