土壁のカビ対策方法
和室の土壁にカビが生えていることに気付きました。カビ取りに挑戦してみたけど、ザラザラしていて上手くできません。それでも少しカビ取りをしたものの、すぐに再発し、以前よりも広がってしまうという結果に。土壁の上手いカビ取り方法はないのでしょうか?
土壁は練った土を塗り重ね、表面を漆喰や砂などで仕上げた壁のことで自然の風合いで趣があります。土壁には、湿度の調整や防臭という機能があるため、快適な空間となり、こだわりを持つ人には根強い人気があります。

しかし、一旦カビが生えてしまうと、その除去は困難です。
土壁は表面を強くこすると、はがれ落ちてしまいますので、掃除機をかけたり拭き掃除ができません。
先に結論から申し上げますと、自力での対処は非常に困難となりますので、土壁にカビが生えた場合には、カビ除去の専門業者に依頼することをおすすめします。
しかし、雨の続く時期や、大雨などの影響で、業者に依頼してもカビ取りに来てもらうまでに時間が空く場合も少なくありません。
そこでこちらの記事では業者に依頼し、カビ取り施工までの間にできる
- カビをこれ以上広げないための対策方法
- カビの応急処置の方法
- 土壁のカビを再発させないための工夫
についてご紹介していきます。
目次
1.土壁のカビにできる応急処置
業者が来るまでに間にできることは、まず換気と除湿そして荷物の移動です。
- 天気の良い日に窓を開けて換気をする
- 荷物を移動させて不用品を処分する
- 土壁のホコリをハタキで取り除く
- 除湿機やサーキュレーターを設置して湿度管理をする
カビをこれ以上広げないために、換気を湿気対策を行いましょう。また、業者を呼んでの施工をする前に、衣類や小物類などの荷物を移動させる必要があります。この際、不用品は処分しておくことでカビの再発を防ぎましょう。
これらの下準備をしたうえで、さらにカビ増殖を食い止めたいという場合には、以下の方法で応急処置をしましょう。
1-1.消毒用エタノールを使う

この方法は、表面にカビが生えている程度の場合や、色素がまだ沈着していない場合に使える方法です。ただし、土壁の種類によっては変色する可能性もあるため、目立たない場所で試して変化しないか確認をしたうえで、実施してください。変色など不安な場合には、換気だけに留め、そのまま業者を待ちましょう。
準備するもの
◇消毒用エタノール
◇スプレーボトル
◇ぞうきん
マスクや手袋も必要に応じて用意しておくと安全に作業できます。
また、土壁のカビを除去する前に、土壁のホコリなどをハタキなどで落としておきましょう。
①消毒用エタノールを吹きかける
まず、カビが発生している箇所と、その周辺の土壁に消毒用エタノールをスプレーで噴霧します。
エタノールで色落ちしてしまうこともあるので、目立たない場所で試してから全面におこなってください。
また、砂壁の一部分だけに噴霧すると色がそこだけ浮いて目立ってしまうこともありますので、噴霧するときは周辺の壁にもエタノールをまんべんなく噴霧した方が良いです。
②土壁をよく乾燥させる
次に、土壁をよく乾燥させます。部屋の換気をしたり
- エアコンや扇風機
- サーキュレーター
- ドライヤー
を使用するとすばやく乾燥できます。消毒用エタノールはカビの殺菌ができますが、カビを漂白する作用はありません。
1-2.塩素系のカビ取り剤は土壁に不向き
市販のカビ取り剤は、次亜塩素酸ナトリウムが主成分の塩素系ですが、土壁では洗い流すことが難しいため、あまりおすすめはできません。
通常の塩素系カビ取り剤はカビを取るだけでなく、漂白もするので土壁の色落ちや土壁にダメージを与えてしまいます。
土壁に使用できるカビ取り剤を使うか、消毒用エタノールで様子を見て、業者が来るまで待ちましょう。
1-3.どのカビ取り剤を使ってよいか迷うときには業者に依頼すること

土壁はデリケートな素材なので、カビを除去するためには専門的な知識や経験を必要とします。
自分で土壁のカビを除去しようとして取り返しのつかないことになってしまうということもあります。
さらに、カビの根が深い場合には土壁の剥離などリフォームが必要になってくる場合がありますので早めに専門のカビ取り業者へ依頼することをおすすめします。
カビの上から塗装をしない

また、施工業者に依頼した際に、カビ取りをしっかりと行わずに上から塗装を重ねてしまうと、カビが再発を繰り返し再度、除カビや塗装などの施工費がかかる場合があります。塗装を重ねてしまう前にまずは、カビ取り施工を行いましょう。
まとめると、土壁のカビ対策以下の通りです。
- 土壁のカビは難易度が高いのでまずは業者へ連絡する
- 業者が来るまでは、換気と除湿、不用品の処分等を行う
- 応急処置としては変色しないか充分確認した上で消毒用エタノールで殺菌する
2.土壁のメリット
土壁は役に立つ機能がたくさん備わっています。
2-1.調湿機能
まず、部屋の湿度が高い場合には土壁が湿気を吸収し、乾燥しているときには湿気を放出する調湿機能があります。
この調湿機能によってカビや結露が発生するのを防ぐ効果があります。
2-2.消臭効果
さらに、土壁には気孔があり、においの素を吸着するため、消臭効果もあります。
そのほかにも、耐火性、断熱性、有害物質吸収分解能力などがあります。
これらの土壁の機能によって、部屋の湿度は快適に保たれ、カビや結露、においなどを防ぐことができるのです。
これだけのメリットを兼ね備えている壁材は他になかなか存在しません。
3.土壁のカビ発生原因

土壁は表面がデコボコしているため、ホコリや汚れが付着しやすいです。
普段の掃除ではたきやハケやほうきなどを使用してホコリなどを払い落とすことが大切ですが、ボロボロと土壁が剥がれて細かい粒が落ちるため、その下の掃除も必要となるので手間がかかり、なんとなく放置してしまいがちです。
土壁の長押や近くに家具などがあるとその裏側に湿気が滞留し、カビが発生していることもあります。
また、土壁は湿気を吸収してくれる機能があるのですが、換気をしないでいると土壁が湿気をためこんでしまい放出できずに限界を超えて、部屋の湿度を上げてしまいます。
カビが発生する条件は、「温度」、「湿度」、「栄養分」の三つの要素がそろった環境です。
カビが好む温度は、私たちが快適にすごせる20℃~30℃と同じなので部屋の中はすでにカビが発生するための条件の一つである「温度」を満たしている状態なのです。
さらに、湿度が高くなった土壁にホコリや汚れが付着することで「湿度」と「栄養分」の条件もそろってしまいカビが発生してしまうのです。
3-1.換気が不足すると湿気が溜まりやすく

私たちは体から一日に4.0リットルも水分が発生するのです。
炊事では1.6リットル、家事で1.0リットルと、意外と多くの水分が発生しており、一日に発生する水分の合計はなんと9.4リットル、一か月で282リットルもあるそうです!
土壁がこの湿気を吸収し、換気をしないでいると部屋の湿度がすぐに上がってしまうことがわかります。
3-2.カビの発生を防ぐ快適な湿度はどれくらい?
カビが発生しやすい湿度は60%以上です。
そのため、湿度計を用いて湿度50%程度を目安に乾燥している場合には加湿を、湿度が高い場合には換気やエアコンのドライや除湿モード、除湿器を活用して湿度を下げましょう。
4.土壁のカビ予防方法

4-1.こまめな換気
換気が不十分で湿気が停滞すると、カビの原因となります。こまめに窓やふすまを開けて湿度の低い新鮮な外気を取り入れ、湿度が高く汚れた室内の空気を外に放出しましょう。
しっかりと換気をすることで土壁を乾燥させ、カビが発生するのを防いでいきます。
また、物が多い場合にも空気が停滞しカビの原因となります。不要なものは処分し、部屋の中に空気の通り道を作るようにしましょう。
4-2.除湿機やサーキュレーターを使う
換気ができないときにはエアコンのドライか除湿モード、除湿器、除湿剤の活用をしましょう。
家具を置く場合には土壁から少し離して(5センチ程)置くと風の通り道ができるので湿気が滞留しなくなります。
4-3.土壁を貼り換える
リフォームを行うことで根本解決とカビ再発防止をすることができます。もしも結露などが発生しやすく、何度も土壁からカビが生えているようであれば土壁を違う壁紙素材に貼り換える「リフォーム工事」もおすすめです。
土壁を剥離し、防カビ剤を噴霧し、防カビ仕様の壁にリフォームしていきます。
費用はかかりますが、もうこれ以上カビに悩まされたくない!という場合には貼り換えも検討してみましょう。
また、長押があることによって湿気や長押と土壁のすき間にホコリやゴミがたまってしまうことを防ぐために、すき間を埋めるのも有効です。
4-4.畳のカビ対策も併せて行う
土壁にカビが発生してしまう原因は畳の湿気による場合も考えられます。
土壁だけでなく畳のカビと湿気対策も併せて行うことで土壁のカビを防いでいきましょう。例えば、畳の上に大きな家具を置いていたり、布団やベッドを直置きしていると、湿気が発生しカビの原因となります。
そこから、土壁にカビが広がっていくというケースもあります。土壁にカビが生えたら、和室全体のカビ対策を行い再発を防ぎましょう。軽度のカビであれば、消毒用エタノールや乾燥などで解決できる場合もありますが、簡単にカビが落とせない場合には、畳を貼り換えたり、フローリングへの貼り換えも検討しましょう。
また、その際は必ず先にカビ取りを行ってから、貼り換えをしないと、畳の下からカビが菌糸を伸ばしてカビが再発する恐れがあります。
いずれの場合にしても、カビ取り業者に一度ご相談ください。
4-5.ホコリをこまめに除去する
土壁にホコリが蓄積すると、これがカビの栄養源となります。土壁は凹凸がありホコリやゴミが蓄積しやすいため、ハタキ等を使って間に入ったホコリを定期的に除去しましょう。
まとめ
土壁のカビ取りは、難易度が高く変色や痛みの原因となるため、基本的にはカビ取り専門業者に委託した方が良いでしょう。
カビ取り業者が来るまでの間、応急処置としては「消毒用エタノール」がおススメです。しかし、カビの色素沈着は落とすことができないので、そのような場合には、土壁も可能な専用のカビ取り剤を使用するという方法もあります。
また、換気や除湿をこまめに行いカビをこれ以上広げないように対策しましょう。
土壁にカビが生えた際の対策方法と家でできるカビ対策方法をまとめると以下の通りです。
- こまめに換気をし、湿度を管理する
- ホコリを除去しカビの栄養源を取り除く
- 土壁のカビ取りに応急処置は消毒用エタノールを使用する
- 土壁のカビ除去は専門的な知識や経験を必要とするため、業者に依頼するのがおすすめです。
土壁にカビが広がり取り返しのつかないことになる前に、早めの対策をしましょう。
ハーツクリーンでは、初回カウンセリングを無料で行っております。おうちの酷いカビにお困りの方、何度市販のカビ取り剤でカビを落としても再発する...という場合はお気軽にご相談ください。
<参考文献>
・高橋矩彦『簡単!住まいのDIYマニュアル壁塗り[珪藻土・漆喰]』2016年、中央精版
・鈴木昌子『壁塗り実例&実践百科』2014年、学研
・西方里見『最高の断熱・エコ住宅をつくる方法』2014年、エクスナレッジ